「検事の信義」柚月裕子著

公開日: 更新日:

 物語は、東京地検から米崎地検に配属されて5年目になる検事・佐方貞人が、担当になった殺害事件に疑問を持ったところから始まる。

 認知症だった母親・道塚須恵を息子・昌平が殺害した事件で、本人は介護疲れから殺害したと自供しており、一見何の問題もないようにも思えるのだが、被害者の遺体発見から逮捕までの2時間に、昌平がなぜ遠くまで逃げなかったのか、不思議に思ったのだ。佐方は、昌平と関わりのあった人に聞き取りを進める。すると、さまざまな証言から当初考えられていた昌平とは全く別の人物像が浮かびあがってきた。(「信義を守る」)

最後の証人」「検事の本懐」「検事の死命」に続く、累計部数40万部突破の人気の「佐方貞人シリーズ」第4弾。本書には、「罪はまっとうに裁かれなければならない」という信条を持つ佐方の姿を描いた「裁きを望む」「恨みを刻む」「正義を質す」「信義を守る」の4つの短編が収録されている。しがらみも忖度もなく、ただ事実を正確に見極め、検事としてのまっとうな仕事をクールに遂行する佐方のブレのない姿に、しびれること必至だ。

(KADOKAWA 1500円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本は強い国か…「障害者年金」を半分に減額とは

  2. 2

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 3

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  4. 4

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  5. 5

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  1. 6

    侍Jで加速する「チーム大谷」…国内組で浮上する“後方支援”要員の投打ベテラン

  2. 7

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    高市政権の物価高対策「自治体が自由に使える=丸投げ」に大ブーイング…ネットでも「おこめ券はいらない!」