「傲慢と善良」辻村深月著

公開日: 更新日:

 西澤架はルックスがよく、女友達も多いモテ男。父から受け継いだ輸入ビール会社を経営している。坂庭真実は、親に逆らわずに生きてきた真面目なお嬢さん。2人は婚活で知り合い、2年後に婚約する。過去の恋愛を引きずる架に結婚を決断させたきっかけは、真実を襲ったストーカー事件だった。ある夜、恐怖のあまり架に救いを求めた真実は、そのまま彼と暮らし始めた。

 ところが、寿退社を祝う職場の送別会が行われた翌日、真実は忽然と姿を消す。警察は事件性を否定したが、ストーカー被害を疑った架は、婚約者の生まれ育った町を訪ね、彼女の過去に分け入っていく。

 厳格な父親と、娘の自立を阻む共依存の母親。そんな両親に反発して早くに家を出た姉。結婚相談所の優雅で辛辣な女経営者。真実に振られた見合い相手……。彼らの話から、婚約者の美点に見えていた善良さの奥にあるものが見えてくる。進学も就職も結婚も親のいいなりで、自分では決められない。自信がないのに自己評価が高く、自分の傲慢さに無自覚。そのまま30代半ばにさしかかり、納得できる結婚相手にまだ巡り合えない。悩んで、もがいて、ようやく出会えた理想の相手、架の前から、彼女はなぜ姿を消したのか。ミステリーめいた展開をはらむ長編恋愛小説。

 晩婚化する現代日本の恋愛・結婚事情と当事者たちの揺れる感情をリアルに描いていて、婚活中の男女に刺さりそう。

(朝日新聞出版 1600円+税)


【連載】ベストセラー読みどころ

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神・梅野がFA流出危機!チーム内外で波紋呼ぶ起用法…優勝M点灯も“蟻の一穴”になりかねないモチベーション低下

  2. 2

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  3. 3

    国民民主党「選挙違反疑惑」女性議員“首切り”カウントダウン…玉木代表ようやく「厳正処分」言及

  4. 4

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  5. 5

    本命は今田美桜、小芝風花、芳根京子でも「ウラ本命」「大穴」は…“清純派女優”戦線の意外な未来予想図

  1. 6

    巨人・戸郷翔征は「新妻」が不振の原因だった? FA加入の甲斐拓也と“別れて”から2連勝

  2. 7

    時効だから言うが…巨人は俺への「必ず1、2位で指名する」の“確約”を反故にした

  3. 8

    石破首相続投の“切り札”か…自民森山幹事長の後任に「小泉進次郎」説が急浮上

  4. 9

    今田美桜「あんぱん」44歳遅咲き俳優の“執事系秘書”にキュン続出! “にゃーにゃーイケオジ”退場にはロスの声も…

  5. 10

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃