「習近平の中国経済」石原享一著

公開日: 更新日:

 世界経済が、いまや中国抜きに語れないのは事実。しかし、その実態はどうか。GDP総額で中国がいずれ米国を抜くのは明白。その成長を支えるのは①スマホ決済②シェアサイクル③ネット通販④高速鉄道だという。たしかにインバウンド旅行者を見てもキャッシュレス決済の霊験はあらたかだ。

 その一方、成長のツケもあらわになった。アナリストとして中国経済を40年間見てきた著者でさえ、近年の中国は気疲れし、マナーの悪さや社会的信用の欠如に驚くという。とはいえ高度成長期の日本人も似たようなものだった。

 むしろ本当の問題は政治家や官僚、経営者らの支配層だ。改革開放時代、国有企業は民営化を迫られたが、いまは「国進民退」といって新国有企業優遇。富国のためには食品の安全など企業文化の確立が求められるが、果たして政財癒着のもとで実現できるかどうかは大きな課題だろう。

 新書サイズながら多方面にわたる視点とデータが豊富に示されている。(筑摩書房 780円+税)

【連載】本で読み解く激動の世界情勢の行方

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  2. 2

    中学受験で慶応普通部に進んだ石坂浩二も圧倒された「幼稚舎」組の生意気さ 大学時代に石井ふく子の目にとまる

  3. 3

    さすがチンピラ政党…維新「国保逃れ」脱法スキームが大炎上! 入手した“指南書”に書かれていること

  4. 4

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  5. 5

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  1. 6

    中日からFA宣言した交渉の一部始終 2001年オフは「残留」と「移籍」で揺れる毎日を過ごした

  2. 7

    有本香さんは「ロボット」 どんな話題でも時間通りに話をまとめてキッチリ終わらせる

  3. 8

    巨人は国内助っ人から見向きもされない球団に 天敵デュプランティエさえDeNA入り決定的

  4. 9

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  5. 10

    佐藤輝明はWBC落選か? 大谷ジャパン30人は空前絶後の大混戦「沢村賞右腕・伊藤大海も保証なし」