「華氏451度」 レイ・ブラッドベリ著、伊藤典夫訳

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思考禁止

 本書の執筆は1953年。SFの巨匠が描くのは、人間にものを考えさせてしまう本は有害であるとして一切の所有が禁止された未来社会の恐怖を描く。

 ガイ・モンターグは、個人が隠し持つ本を見つけては焼き払うのを職務とする焚書官。イヤホン型ラジオや巨大な壁テレビから愚にもつかない情報にさらされ、思考停止状態に追いやられることに疑問を持たなかったモンターグだが、近所に住む少女クラリスと出会って本を敵対視することに疑問を持ち始める。最期まで本を手放さずに焼け死んだ老女を見たモンターグは焚書官を辞め、自ら本を読む仲間に加わることになる……。

 トリュフォーが映画化し、そこでもプラトンや聖書を暗記して本の内容を守っているグループの姿が印象的だった。現代文明を鋭く風刺した不朽の名作。

(早川書房 860円+税)

【連載】名作でよむ破綻した近未来

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