「風致の島」赤松利市著

公開日: 更新日:

 東南アジアの巨大開発計画を受注したスーパーゼネコンの現地駐在員として派遣された青木は、計画が頓挫したあと会社を辞めたが、不正行為で得た金を手に島に舞い戻り、隠遁生活を送っていた。

 そんなある日、現地法人の元同僚・西村から、カジノを核とするペニー島の総合リゾート開発計画に一枚噛まないかと持ち掛けられる。にわかには信じられない話だったが、裏の事業主の存在を知った青木は承諾。利権に食い込むために密かに動き出すが、日系免税店の総支配人、カラオケバーのママと愛人のイタリア人マフィアらまでが計画に触手を伸ばしてくる。

 一方で青木は、島の男ワヤンの第2夫人で、精神を病んだ日本人女性ミチコを檻で飼っていた……。

 黒呪術、祭礼など、島の風土を織り込みながら、リゾート(風致)を舞台に利権と性に群がる男たちの姿を描いた謀略小説。印僑の組織、ゼネコン本社など人間関係が複雑に絡み合い、誰が味方で誰が敵なのか、いくつもの思惑が蠢き、いつしか青木の人生の歯車が狂っていく……。

 最後に笑うのは一体、誰なのか。大藪春彦賞作家が描くどんでん返しの連続にめくるページが止まらない。

(講談社 1600円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    国分太一の先行きはさらに険しくなった…「答え合わせ」連呼会見後、STARTO社がTOKIOとの年内契約終了発表

  2. 2

    大谷翔平も目を丸くした超豪華キャンプ施設の全貌…村上、岡本、今井にブルージェイズ入りのススメ

  3. 3

    100均のブロッコリーキーチャームが完売 「ラウール売れ」の愛らしさと審美眼

  4. 4

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  5. 5

    日本語ロックボーカルを力ずくで確立した功績はもっと語られるべき

  1. 6

    都玲華プロと“30歳差禁断愛”石井忍コーチの素性と評判…「2人の交際は有名」の証言も

  2. 7

    規制強化は待ったなし!政治家個人の「第2の財布」政党支部への企業献金は自民が9割、24億円超の仰天

  3. 8

    【伊東市長選告示ルポ】田久保前市長の第一声は異様な開き直り…“学歴詐称”「高卒なので」と直視せず

  4. 9

    AKB48が紅白で復活!“神7”不動人気の裏で気になる「まゆゆ」の行方…体調は回復したのか?

  5. 10

    ラウールが通う“試験ナシ”でも超ハイレベルな早稲田大の人間科学部eスクールとは?