「チョウセンアサガオの咲く夏」 柚月裕子著

公開日: 更新日:

 山間の町で暮らす三津子は、認知症の母親を在宅でひとりで面倒を見ている。高校卒業後、都会で働いていたが、母が脳出血になり、仕事を辞めて田舎に帰ってきたのだ。自分を溺愛してくれた母の面倒を見ることは重荷ではないが、つらいことがあった。孤独だ。

 2カ月に1度、主治医の平山が往診に来ると安らぎを覚える。「三津子ちゃんはエライなぁ。ご近所でも評判じゃ」と褒め称えられると、三津子はうれしくてたまらなかった。やがて三津子は母の体調が悪くなることを願うようになる。

 ある日、三津子はふと思いめぐらせる。幼い頃、ケガや病気ばかりしていた私に、母はさぞ慌てただろう。しかし、父が事故で死んで以来、自分はケガをすることはなくなった。もしや──。(表題作)

「孤狼の血」シリーズや「盤上の向日葵」など、数々のベストセラー作品を世に送り出してきた著者による、初のオムニバス短編集。ミステリーや、ユーモア、ホラーまでさまざまなジャンル11話が収録されている。

 背筋が寒くなるような結末のほか、奉公に出た少年の成長譚や、猫を主人公にした物語もあり、著者の幅広さを実感する一冊だ。

(KADOKAWA 1760円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    箱根駅伝中継所ドクターは全員が順大医学部OB…なぜか協力しない大学がウジャウジャ

  2. 2

    青学大駅伝選手 皆渡星七さんの命を奪った「悪性リンパ腫」とはどんな病なのか?

  3. 3

    統一教会「自民290議員支援」で黒い癒着再燃!ゴマかす高市首相をも直撃する韓国発の“紙爆弾”

  4. 4

    「インチキ男 ジャンボ尾崎 世界の笑い物」マスターズで不正しても予選落ち(1994年)

  5. 5

    萬福(神奈川・横浜)異彩を放つカレー焼麺。常連の要望を形にした強めのとろみ

  1. 6

    浜辺美波 永瀬廉との“お泊りデート”報道追い風にCM契約アップ

  2. 7

    神田沙也加さん「自裁」の動機と遺書…恋人との確執、愛犬の死、母との断絶

  3. 8

    長澤まさみ「結婚しない女優」説を覆したサプライズ婚の舞台裏… 福永壮志監督と結びつけたのは?

  4. 9

    スライム乳の小向美奈子はストリッパー歴12年 逮捕3回経て

  5. 10

    悠仁さま初の新年一般参賀 20年後「隣に立つ皇族」は誰か? 皇室に訪れる晩婚・少子化の波