「チョウセンアサガオの咲く夏」 柚月裕子著

公開日: 更新日:

 山間の町で暮らす三津子は、認知症の母親を在宅でひとりで面倒を見ている。高校卒業後、都会で働いていたが、母が脳出血になり、仕事を辞めて田舎に帰ってきたのだ。自分を溺愛してくれた母の面倒を見ることは重荷ではないが、つらいことがあった。孤独だ。

 2カ月に1度、主治医の平山が往診に来ると安らぎを覚える。「三津子ちゃんはエライなぁ。ご近所でも評判じゃ」と褒め称えられると、三津子はうれしくてたまらなかった。やがて三津子は母の体調が悪くなることを願うようになる。

 ある日、三津子はふと思いめぐらせる。幼い頃、ケガや病気ばかりしていた私に、母はさぞ慌てただろう。しかし、父が事故で死んで以来、自分はケガをすることはなくなった。もしや──。(表題作)

「孤狼の血」シリーズや「盤上の向日葵」など、数々のベストセラー作品を世に送り出してきた著者による、初のオムニバス短編集。ミステリーや、ユーモア、ホラーまでさまざまなジャンル11話が収録されている。

 背筋が寒くなるような結末のほか、奉公に出た少年の成長譚や、猫を主人公にした物語もあり、著者の幅広さを実感する一冊だ。

(KADOKAWA 1760円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    バタバタNHK紅白 高視聴率でも今田美桜、有吉弘行らMC陣は負担増「出演者個々の頑張りに支えられた」

  2. 2

    松山千春がNHK紅白を「エコひいき」とバッサリ!歌手の“持ち時間”に求めた「平等」の正当性を考える

  3. 3

    「将軍 SHOGUN」シーズン2も撮影開始 2026年は柄本明、平岳大ら海外進出する日本人俳優に注目

  4. 4

    ロッテ前監督・吉井理人氏が2023年WBCを語る「大谷とダルのリリーフ登板は準決勝後に決まった」

  5. 5

    菊池風磨のカウコン演出に不満噴出 SNS解禁でSTARTO社の課題はタレントのメンタルケアに

  1. 6

    ロッテ前監督・吉井理人氏が佐々木朗希を語る「“返事もしなかった頃”から間違いなく成長しています」

  2. 7

    矢沢永吉ライブは『永ちゃんコール』禁止で対策も…B'z『客の大熱唱』とも通じる“深刻な悩み”

  3. 8

    《国分太一だけ?》「ウルトラマンDASH」の危険特番が大炎上!日テレスタッフにも問われるコンプライアンス

  4. 9

    巨人オーナーから“至上命令” 阿部監督が背負う「坂本勇人2世育成&抜擢」の重い十字架

  5. 10

    現役女子大生の鈴木京香はキャピキャピ感ゼロだった