「チョウセンアサガオの咲く夏」 柚月裕子著

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 山間の町で暮らす三津子は、認知症の母親を在宅でひとりで面倒を見ている。高校卒業後、都会で働いていたが、母が脳出血になり、仕事を辞めて田舎に帰ってきたのだ。自分を溺愛してくれた母の面倒を見ることは重荷ではないが、つらいことがあった。孤独だ。

 2カ月に1度、主治医の平山が往診に来ると安らぎを覚える。「三津子ちゃんはエライなぁ。ご近所でも評判じゃ」と褒め称えられると、三津子はうれしくてたまらなかった。やがて三津子は母の体調が悪くなることを願うようになる。

 ある日、三津子はふと思いめぐらせる。幼い頃、ケガや病気ばかりしていた私に、母はさぞ慌てただろう。しかし、父が事故で死んで以来、自分はケガをすることはなくなった。もしや──。(表題作)

「孤狼の血」シリーズや「盤上の向日葵」など、数々のベストセラー作品を世に送り出してきた著者による、初のオムニバス短編集。ミステリーや、ユーモア、ホラーまでさまざまなジャンル11話が収録されている。

 背筋が寒くなるような結末のほか、奉公に出た少年の成長譚や、猫を主人公にした物語もあり、著者の幅広さを実感する一冊だ。

(KADOKAWA 1760円)

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