「海を渡った日本文学」堀邦維著

公開日: 更新日:

「海を渡った日本文学」堀邦維著

 現代日本文学で最初に英訳が出たのは小林多喜二の「蟹工船」である。1933年にアメリカとイギリスの兄弟会社で同時に出版された。

 英訳したのは日本の警察に治安維持法で逮捕されたイギリス人、ウィリアム・マックスウェル・ビカートン。当時、政治的に不穏当な部分は編集者が伏せ字にしていたが、「XXX」というように伏せ字のまま英訳した箇所はなく、訳者が不明箇所を想像で補足するか削除している。

 逆に、「どの鉄道の枕木もそれはそのまま一本一本労働者の青むくれた『××』だった」には「corpse(死骸)」を入れている。想像でこの内容を特定するのは無理なので、元の原稿を見せてもらったのではないか。

 ほかに、川端康成の「雪国」などの翻訳エピソードを紹介する。

(書肆侃侃房 2200円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    【原田真二と秋元康】が10歳上の沢田研二に提供した『ノンポリシー』のこと

  3. 3

    カーリング女子フォルティウスのミラノ五輪表彰台は23歳リザーブ小林未奈の「夜活」次第

  4. 4

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  5. 5

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  1. 6

    福山雅治&稲葉浩志の“新ラブソング”がクリスマス定番曲に殴り込み! 名曲「クリスマス・イブ」などに迫るか

  2. 7

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 8

    松岡昌宏も日テレに"反撃"…すでに元TOKIO不在の『ザ!鉄腕!DASH!!』がそれでも番組を打ち切れなかった事情

  4. 9

    年末年始はウッチャンナンチャンのかつての人気番組が放送…“復活特番”はどんなタイミングで決まるの?

  5. 10

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった