「The Beauties of Nature」平野実穂著

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「The Beauties of Nature」平野実穂著

 SNSのフォロワー数が35万人を超え、その人気は海を越え、海外でも精力的に個展を開催している人気画家の初の画集。

 油彩で描かれているのは、すべて女性なのだが、特徴的なのは薄着をまとっているか、もしくはヌードで描かれる彼女たちとともに、植物や小動物が多数描き込まれていることだ。

 例えば「自分に嘘をついた日」と題された作品では、今にも泣き出しそうな表情の女性の耳から大ぶりのイヤリングのように桜の小枝が垂れ下がり、まるで彼女が落とした涙のように花を散らしている。

 同じように、「息が通う」という作品では、頭部からモクレンの花だろうか、大きな白い花をつけた枝が冠のように女性の頭を飾り、その透き通るような可憐な首に一頭のアゲハチョウが羽を広げて止まっている。

 無重力状態にいるかのように、長い髪もランジェリーのような薄着も方向性を失って、自在にゆらめいている女性の3態を描いた「流動」と題された連作は、同じ女性を描いているのだが、その表情はさまざま。よく見ると女性の体にまとわりついているのは水草で、周囲には愛らしい金魚たちが泳いでおり、彼女は水中を揺蕩っているようだ。

 一方、「気流」と題された連作では、紅梅と白梅、それぞれの花を咲かせた樹木と女性、そして雲が描かれ、ここは天上かと思わせるような浮遊感に満ちている。

 雲と梅という何とも日本画的な題材が美しい女性画へと昇華している。

「装飾-牡丹-」という作品では、その髪から生えているかのように天に向かって大輪のボタンの花が幾輪も咲き誇り、その頭部をことほぐように覆うベールをシジュウカラと思われる小鳥が優しく持ち上げようとしており、植物と小動物の競演が広がる。どの作品も多くの人が油彩に抱いている厚塗りの重厚感あふれるイメージとは異なり、透明感がある。

 著者は、高校の美術科で油彩コースを選んだのだが、苦痛で仕方なかったという。その理由のひとつが厚塗りが苦手で薄塗りしかできなかったからで、その癖を生かす方に転換して現在の画風に到達したそうだ。

 薄塗りでも弱い印象にならないよう、透明色や半透明色、不透明色などのバランスにも気を付けて描いていると。

 植物や動物と人を一枚の絵の中に描くことについて、著者は「装飾品を着飾る感覚と、その装飾品のモチーフから連想する自然のものを直接的に融合させています。そうすることで人と自然が共生しているような表現ができるのではと思いました。また植物の生命力、そして人間の心身の移ろいや感情の起伏を感じてもらえるよう、なるべく躍動感も意識しています」とその狙いを語る。

 2009年、画家として活動を始めた初期の頃の「春」から新作まで、その歩みと進化の軌跡が一望できるファン待望の一冊となることだろう。

(芸術新聞社 3300円)

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