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井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

NORTH LAKE BOOKS(我孫子)バーナード・リーチも住んだ“北の鎌倉”の古本ブックカフェ

公開日: 更新日:

「実はここ我孫子は“北の鎌倉”と呼ばれたんです」と、店主の松田拓巳さんがおっしゃる。いやー知らなかった。戦前、志賀直哉も武者小路実篤も柳宗悦もバーナード・リーチも我孫子・手賀沼のほとりに住んでいたとは。もしも彼らが今も生きていたなら、この店に通ったに違いない──と思えるのが、その名も「ノースレイクブックス」。手賀沼を“庭”にしたような立地だ。

 2014年にオープン。本棚は2つだけ置くカフェとして始動し、ワークショップの場所としても人気を得たが、コロナ禍に方向転換。14坪の半分が古本、あと半分が12席のカフェという配置の「古本ブックカフェ」に変わった。

14坪の店内にビートジェネレーションのアート、詩、思想の本がずらり

 ジャズがBGM。パッと目につく面陳列に、「JAPANESE CULTURE」「Collectable Picture Book Store」「バウハウスからマイホームまで」「列島綺想曲」……。

 ん? え~と、お得意ジャンルは? 「近頃は、こだわらないことにこだわっていますね」と、妻の昌江さん。むむ。奥が深そうだ。

 ポップもジャンルの案内書きもないが、端から本棚を見ていくと、誰もが気づくはず。「アメリカ文学、多い」と。私は「ビリー・ザ・キッド全仕事」にまず手が伸びたが、「えっと、特に多いのはビートジェネレーションですね」になるほど。つまり、経済が猛烈に発展する50~60年代、レールに乗らずに自分たちのスタイルで生きることを求めた人たちのアート、詩、思想などの本がずらり。

 松田さんは以前、古着の仕事をしていて、アメリカ各地へ仕入れに行った。ビートジェネレーションの金字塔の版元・書店、サンフランシスコのシティ・ライト・ブックストアへも「まさか将来、自分が本屋をするとは思わずに行っていた」って、さすが。

 ほかに、国内の民俗学、地誌、民芸の本も、それにレコードも多いもよう。私はビートジェネレーション特集の「現代詩手帖」と、ついに見つけた三角寛特集の雑誌「マージナル」を買った。

◆我孫子市緑2-11-48/JR常磐線我孫子駅から徒歩15分/12~17時、不定休

ウチらしい本

「REALITY SANDWICHES」ALLEN GINSBERG/写真・文NiSHEN刊 売値8580円

「ビートジェネレーションの源流になった詩人アレン・ギンズバーグが、50~60年代にウィリアム・バロウズ、ジャック・ケルアックといった作家仲間を撮った写真集です。あの時代のいろいろな風景も収録され『バロウズのお家の庭で』といった手書きのテキストも。この本がまとめられたのは89年ですが、それ以前におのおのの写真が絵ハガキとして販売されていて、私は買っていました」

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