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井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

エトセトラブックスBOOKSHOP(世田谷・代田)切り口は多様!LGBT、アート、医療などフェミニズム関連本がズラリ

公開日: 更新日:

 この店はどんなふうにして? と聞くと、「独立系書店の先駆け、下北沢の『B&B』の店長だったんです。密かに社会問題の棚をつくっていたら、河出書房新社の編集者だった松尾さんに『フェミニズムの出版社と本屋をつくるんだけど、一緒にやらない?』と声をかけられて」と、店長の寺島さやかさん(38)。「フェミニズムって?」と重ねて質問。

「性差別をなくすための運動。私たちはそういう感覚です」

 つまり、女性のこと限定ではないのだ。

 フリー編集者だったもう1人を加えた3人で、2019年に出版社「エトセトラブックス」を始動。本屋は21年に開店。

 推定10坪の店内に、推定3000冊。私など、初顔合わせで、「読みたい」と飛びつく本の大集合なのだから。

「フェミニズムにこんな切り口があったとは」と同行カメラマン

 建築・家、レズビアン、LGBT、アート、母・シングル、音楽・映像、セックスワーク、医療・妊娠・出産・中絶、ルッキズムなどのカテゴリーがごく自然に並ぶ棚を前に、同行カメラマン(40)が「フェミニズムにこんな切り口があったとは」と目を輝かせる!

 おっと、「男性学」関連のコーナーがあった。「日本の童貞」「男性は何をどう悩むのか」「さよなら、男社会」と目を合わせてから、「エトセトラブックスの定期刊行誌『エトセトラ』の最新号の特集がぴったり『男性学』なんだ」と手に取る。特別編集長の周司あきらさんは、トランスジェンダー男性だそうだ。

 同誌の冒頭に、その周司さん作成の1920年~現代の「男性史・女性史」沿革が載っていて、「買います」と私。その横に面陳列の絵本「はなのすきなうし」は、「闘牛のような強い牛を目指す牛が多い中、花が好きな牛が主人公。それでいいんだよという、すてきな翻訳絵本」ですって。そうか、こういうのも男性学なんだ。「はい。“メンズリブ”の古い本とかは、今、読むに値するか……」と寺島さん。アップデートされたフェミニズム空間は、とても心地よかった。

◆世田谷区代田4-10-18 1階/京王井の頭線新代田駅から徒歩2分/木~土曜の12~20時(イベントの日は繰り上げ閉店)

うちの推し本

「痴漢とはなにか」牧野雅子著

「痴漢が報道されると、ネットで関連記事を探す人が多いようですが、そんなときに読んでほしいのが、この本ですね。痴漢事件の件数、メディアでの扱われ方、冤罪ばかりが語られるのはなぜか、女性専用車両をどう考えるか。痴漢は、TSUNAMIと同じく日本語が世界共通なんですよ。『プレイボーイ』の記事などを引用した、読みやすい一冊です」

(エトセトラブックス 2640円)

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