「雨とほくろ」凪著

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「雨とほくろ」凪著

 自らを「かわいい屋さん」と称し、「かわいい」をテーマにさまざまな女性たちの姿を描いてきた人気イラストレーターの作品集第2弾。

 ページを開いて、真っ先に目に飛び込んでくる作品に男性読者はドキッとするのではなかろうか。

 アップで描かれた女性は、軽く目を閉じ、その周囲には涙を思わせるいくつもの水滴が描かれている。

 作品のタイトルは「朝露」とあるので、水滴は何かの拍子に顔に降りかかってきた朝露であり、目をつぶっているかのように見える女性の表情は、突然の災難に目を伏せただけかもしれない。しかし、その表情には陰りがあり、思わず声をかけたくなるほどはかなげだ。

「春一番」と題された作品では一転、力強い瞳で真正面を見つめている女性が描かれる。見つめる先には何があるのか。学生のようなシンプルで清楚な装いの彼女の髪は、タイトル通り、風にあおられ乱れているが、それも気にならないようで、その瞳は一途だ。

 春、彼女が見つめているのは、まさに未来なのだろう。その乱れた髪の間から、口元の小さなほくろがのぞいている。

 この作品の隣のページには、新生活が始まり、慣れないハイヒールを履き、かかとに貼られた絆創膏に血がにじんでいる足元だけを描いた「張り切り」と題された小品がそえられている。

「春一番」の彼女のように、そして書名にもあるように、多くの登場人物にほくろが描かれている。

 シンガー・ソングライターの吉澤嘉代子さんとの巻末対談で、著者はその理由を「ほくろやそばかすが好きで、それもその子のパーソナルな感じ」がするからだと語っている。

「夕立」という作品では、突然の雨による湿気で髪の毛が「ぼわぼわ」になってしまった女の子が描かれる。

 特に髪はこだわって描くという著者は、どんなにワックスとかで押さえていても「アホ毛みたいな、フワッと浮いている短い毛」も好きだという。現実で「アホ毛がない女の子はいない」と思うからだそうだ。

 泣いて流れたメークの跡も、ぼさぼさになってしまった髪など、普段女の子が隠したい、見せたくないという姿も作品に描き込むのは「どんな瞬間も『かわいい』」「『ほくろ』もかわいい」んだよ、という女性たちの存在を丸ごと肯定するメッセージでもあるようだ。

 描かれている女の子たちの髪形もトレンドの最先端が取り入れられており、対談相手の吉澤氏が「『この髪形をお願いします』って美容室に絵を持って行きたくなる」ほどだという。

 髪形だけに限らず口紅の色やまつ毛のカラーマスカラまでこだわったメークや、浴衣やドレスなどの装い、イヤリングやピアスなどの装飾品まで。季節の移ろいに合わせ、とことんプロデュースして描かれた女性たち。

 その一人ひとりを見つめていると、彼女たちの声までもが聞こえてきそうだ。

(芸術新聞社 2750円)

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