著者のコラム一覧
井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

SAKANA BOOKS(サカナブックス)新宿区・愛住町「週刊つりニュース」3代目社長がしかける魚に特化した本屋

公開日: 更新日:

「週刊つりニュース」のオフィスビルの1階。昭和期を中心とした各種釣り竿や魚籠を展示し、無料公開する「釣り文化資料館」があり、その入り口が「魚」に特化した本が並ぶ、4坪ほどの本屋さんとなっている。

「2022年7月にグランドオープンしました。“釣りは楽しい”だけではまずい時代になっているからです」と、本屋も担当する週刊つりニュース3代目社長の船津紘秋さん。どういうことか。

 海水温が上がり、かつては沖縄にいた魚を本州近海で見かける。川魚にも外来種の遺伝子が混ざる。そうした中、「広く魚と、取り巻く自然環境に関心を持ってほしいんです」と。想定外だったのは、「週刊つりニュースの読者は9割以上が中高年男性なのに、本屋への来店は20~30代の男女が中心。むしろ女性が多いこと」とも。

 さてさて、棚を拝見。まず「けったいな生きもの ぴかぴか深海生物」「微生物ハンター、深海を行く」など、「深海」がキーワードの本がずらり。「先日、熱海の干物屋さんたちに来てもらい、深海魚に触る+トークのイベントをやったら大人気でした」って。ほー。平積みはSAKANA BOOKS自社本の「水族館人」。

「水族館は飼育員のイメージが強いですが、建物の設計やガラスの施工、絵を描くなど、いろいろ携わる人がいるわけで、15人のインタビュー集です」。わ、面白そう。

 絵本も多いなーと眺めていると、船津さんが「これ、読んでほしい」と「クジラがしんだら」という、かわさきしゅんいち絵による一冊を取り出した。

「クジラが死んだら、どうなると思います?」「考えたこともなかった」とやりとり。「海の底に沈んで、さまざまな深海生物のエサになり……。専門家の監修も受けて命の循環を描いた、物語絵本と科学絵本の中間なんですよ」と聞いて、思わず身を乗り出す。

 ほかにも、「かいぼり」や魚料理についての本の数々、さらに“水生生物クリエーター”向き棚貸しスペースで見つけた、町の魚屋さんが自主制作した冊子「身近な魚の寄生虫」にも首っ丈になった。

◆新宿区愛住町18-7 ㈱週刊つりニュース1階/都営地下鉄新宿線曙橋駅A1出口から徒歩5分、丸ノ内線四谷三丁目駅2番出口から徒歩6分/℡03・3355・6401(週刊つりニュース代表電話)/12時~17時半、木・金曜休み

ウチで売れている本

「日本の美しい水族館」銀鏡つかさ著

「著者は、幻想的な水族館の写真がSNSでも人気の写真家。この本は、全国から厳選した44の水族館を撮り下ろして紹介しています。表紙の写真の美しさに驚きますが、これは神戸にある、アートと掛け合わせた水族館。各館とも生き物ばかりか、水槽や建物自体、順路のつくりなど、コンセプトの面白さも解説され、実際に行きたくなること必至。売れた冊数? 2年で3ケタはいっています」

(エクスナレッジ刊 1980円)

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