「新宿ゴールデン街〈双葉〉女三代記」萩原初江、城島徹著
「新宿ゴールデン街〈双葉〉女三代記」萩原初江、城島徹著
昭和23年の開業以来、新宿ゴールデン街の最古参バーのひとつとなった「双葉」。本書は、そんな「双葉」のルーツをたどりつつ、初代ママの萩原操、2代目ママ幸子、3代目ママ初江という女3代が守ってきた新宿の酒場文化とその変遷をたどったもの。
第1部「追跡・〈明治の製糸王〉萩原彦七」では、初江ママの曽祖父・萩原彦七が、八王子で日本一の製糸工場をつくり上げ「武相の製糸王」と呼ばれるまでにのし上がったものの、生糸恐慌で没落し波乱の人生を送ったことが緻密な取材で浮かび上がる。第2部「新宿ゴールデン街〈双葉〉家族物語」では、初江の祖父・清光と祖母・操が、疎開先から焼け野原の新宿に戻り、おでんの屋台を始めたところから語られる。屋台を閉めて現在地での営業開始、東京五輪での深夜飲食店への規制による危機、新宿ゴールデン街命名の経緯、唐牛健太郎、浅利慶太、小林亜星らの常連客との付き合い、地上げや再開発に新宿が揺れた時期、コロナ禍の大ピンチを乗り越えた後に外国人客が来るようになった今など、戦後の歴史と共に歩んだ飲み屋文化がリアルに伝わってくる。
(藤原書店 2420円)