「飛博」楡周平著
「飛博」楡周平著
上田安治は、テキ屋の元締だった父親・松吉を亡くしたばかり。納骨を済ませたある日、コンサルタントを名乗る堂上久之がやってきた。自宅以外に相続したものはないはずの安治は、堂上から松吉が違法賭博用の「レース鳩」を所有していることを知らされ、鳩の売却を提案される。高校中退後、40歳を迎える今まで非正規の仕事をするしかなかった安治は、鳩を賭博好きの台湾人に売却した上で、鳩の世話をする鳩務員という正社員の仕事も世話してもらえるという話に飛びついた。
ところが安定した生活を手に入れたと思った直後、彼らがマフィアであることが判明。関係者の不審な死や、それにともなって膨れ上がっていく台湾からの参加者に不穏さを感じ、法外なギャンブルビジネスに不安を覚えるのだが……。
1996年に「Cの福音」でデビューして以降、経済小説からハードボイルド、ミステリーなど幅広い分野で活躍する著者による最新作。前半あっという間に闇賭博の世界に巻き込まれていく主人公にハラハラすること必至。真実が判明するに従って、そのからくりの巧妙さに驚愕させられる。 (祥伝社 2090円)