「天がたり」麻宮好著

公開日: 更新日:

「天がたり」麻宮好著

 長屋に暮らす10歳の心太は、かつて父がつくったみくじ筒を持って、毎日永代橋のたもとに立つ。道行く人に辻占い売りをして、日銭を稼いでいるのだ。ある日、黒染めの法衣を着た坊主に「おまえは死んだ父親と母親に会いたいのだろう。連れて行ってやる」と言われ、一緒に橋を渡った。するとそこは、あの世とこの世の境目で、舟に乗ろうとする大勢の死者たちがいた。両親には会えなかったが、翌日から心太は、黒法衣の坊主--鬼心和尚が「明日からおまえの目が変わる」と言った通り、幽霊が見えるようになる。

 40年も“この世”にいて生前を忘れてしまったという侍・鏡や、先読みができるおみねら幽霊たちに助けられ、心太の辻占いは「当たる」と評判になっていく。そんな中、長屋の権助爺さんの亡骸に、他の霊が入り込んだ。一体誰が何の理由で入ったのか。心太は鬼心和尚と共に化け物に対峙する。

 死者が見える少年・心太が、この世にとどまる幽霊たちとつながりを持ち、助け助けられる人情時代小説。だが心太が関わるのは幽霊だけではない。残された者の未練をすくい、死者とつながったとき小さな奇跡が起き、やがて両者が救われていく。見えない世界を優しく描いた心温まる物語だ。 (講談社 2365円)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    オコエ瑠偉 行方不明報道→退団の真相「巨人内に応援する人間はいない」の辛辣

  2. 2

    矢沢永吉&松任谷由実に桑田佳祐との"共演"再現論…NHK紅白歌合戦「視聴率30%台死守」で浮上

  3. 3

    ヤクルト青木宣親GMは大先輩にも遠慮なし “メジャー流”で池山新監督の組閣要望を突っぱねた

  4. 4

    神田沙也加さん「自裁」の動機と遺書…恋人との確執、愛犬の死、母との断絶

  5. 5

    藤川阪神の日本シリーズ敗戦の内幕 「こんなチームでは勝てませんよ!」会議室で怒声が響いた

  1. 6

    日本ハムが新庄監督の権限剥奪 フロント主導に逆戻りで有原航平・西川遥輝の獲得にも沈黙中

  2. 7

    DeNA三浦監督まさかの退団劇の舞台裏 フロントの現場介入にウンザリ、「よく5年も我慢」の声

  3. 8

    阿部監督のせい?巨人「マエケン取り失敗」の深層 その独善的な振舞いは筒抜けだった

  4. 9

    大谷翔平、笑顔の裏に別の顔 日刊ゲンダイは花巻東時代からどう報じてきたか、紙面とともに振り返る

  5. 10

    プロスカウトも把握 高校球界で横行するサイン盗みの実情