「サムライ漂海記」天野純希著
「サムライ漂海記」天野純希著
主人公は、幼い頃に左目の視力を失って以来、左目を眼帯で覆っている隻眼の武士・真鍋八弥。生まれてすぐ父親は行方知らずになり、12歳で母親を亡くした八弥は、真鍋家の当主の計らいで、実子とほぼ同等の扱いを受けられる猶子の身分を得ていた。
もともと真鍋家は、瀬戸内海東部の真鍋島を本拠とする武士集団だった。しかし瀬戸内海西部の村上海賊衆に追われて、真鍋島を捨てて和泉国南部の淡輪に移り、織田信長の傘下に入った経緯があった。八弥は、当主の恩に報いるためにも真鍋島を取り戻すという望みを持っていた。
だが、織田軍に兵糧攻めされた大坂本願寺が毛利軍に救援を求めたことで、八弥のいた船は300艘の軍船と対峙して沈没。なんとか生き残った八弥は奴隷として売られ、イスパニア艦隊の奴隷兵士になることに。世界各地で戦いに明け暮れるなか、神や正義の名のもとに行う戦いに疑問を持ち始めるのだが……。
「桃山ビート・トライブ」でデビューして以来、ユニークな視点で描いた歴史小説が人気の著者の最新作。世界を転戦する若き武士の大冒険に手に汗握る。
(光文社 2200円)