「サムライ漂海記」天野純希著

公開日: 更新日:

「サムライ漂海記」天野純希著

 主人公は、幼い頃に左目の視力を失って以来、左目を眼帯で覆っている隻眼の武士・真鍋八弥。生まれてすぐ父親は行方知らずになり、12歳で母親を亡くした八弥は、真鍋家の当主の計らいで、実子とほぼ同等の扱いを受けられる猶子の身分を得ていた。

 もともと真鍋家は、瀬戸内海東部の真鍋島を本拠とする武士集団だった。しかし瀬戸内海西部の村上海賊衆に追われて、真鍋島を捨てて和泉国南部の淡輪に移り、織田信長の傘下に入った経緯があった。八弥は、当主の恩に報いるためにも真鍋島を取り戻すという望みを持っていた。

 だが、織田軍に兵糧攻めされた大坂本願寺が毛利軍に救援を求めたことで、八弥のいた船は300艘の軍船と対峙して沈没。なんとか生き残った八弥は奴隷として売られ、イスパニア艦隊の奴隷兵士になることに。世界各地で戦いに明け暮れるなか、神や正義の名のもとに行う戦いに疑問を持ち始めるのだが……。

「桃山ビート・トライブ」でデビューして以来、ユニークな視点で描いた歴史小説が人気の著者の最新作。世界を転戦する若き武士の大冒険に手に汗握る。

 (光文社 2200円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  2. 2

    ヤクルト「FA東浜巨獲得」に現実味 村上宗隆の譲渡金10億円を原資に課題の先発補強

  3. 3

    農水省「おこめ券」説明会のトンデモ全容 所管外の問い合わせに官僚疲弊、鈴木農相は逃げの一手

  4. 4

    早大が全国高校駅伝「花の1区」逸材乱獲 日本人最高記録を大幅更新の増子陽太まで

  5. 5

    timelesz篠塚大輝“炎上”より深刻な佐藤勝利の豹変…《ケンティとマリウス戻ってきて》とファン懇願

  1. 6

    早瀬ノエルに鎮西寿々歌が相次ぎダウン…FRUITS ZIPPERも迎えてしまった超多忙アイドルの“通過儀礼”

  2. 7

    国民民主党“激ヤバ”女性議員ついに書類送検! 野党支持率でトップ返り咲きも玉木代表は苦悶

  3. 8

    池松壮亮&河合優実「業界一多忙カップル」ついにゴールインへ…交際発覚から2年半で“唯一の不安”も払拭か

  4. 9

    波瑠のゴールインだけじゃない? 年末年始スクープもしくは結婚発表が予想される大注目ビッグカップル7組総ざらい!

  5. 10

    アヤックス冨安健洋はJISSでのリハビリが奏功 「ガラスの下半身」返上し目指すはW杯優勝