「『核抑止論』の虚構」豊下楢彦著

公開日: 更新日:

「『核抑止論』の虚構」豊下楢彦著

 世界情勢が緊迫する中、改めて核を巡る議論について考えるテキスト。

 核抑止論は、相手側が核攻撃をしかけてくる場合には、より破壊的な報復核攻撃を加えるという「脅し」をかけることによって攻撃を抑えるという構図。しかし、この脅しが機能するか否かは、こちら側の判断ではなくあくまでも相手側の判断、認識にかかっている。この脅しの信憑性の問題こそが核抑止論の核心に位置づけられてきた。冷戦時代は、相手側に脅しの信憑性を認識させるために核戦力の増強を誇示し合い、さらに脅しのレベルは最終的に理性を喪失した状態=狂気を演ずるまでにエスカレートする。ベトナム戦争時のニクソン大統領は自らこれを“狂人理論”と称した。

 核抑止論の本質を解き明かし、「抑止力の強化」しか語りえない伝統的な抑止論の限界を指摘する。 (集英社 1265円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    号泣の渋野日向子に「スイングより、歩き方から見直せ!」スポーツサイエンスの第一人者が指摘

  2. 2

    一発退場のAぇ!group福本大晴コンプラ違反に「複数人関与」疑惑報道…旧ジャニ“インテリ”枠に敬遠の風向き

  3. 3

    だから今年の日本女子オープンはつまらない…“簡単コース”で予選カットラインは史上最少「-1」

  4. 4

    崖っぷち渋野日向子に「日本人キャディーと縁を切れ」の声…外国人起用にこれだけのメリット

  5. 5

    囁かれていた「Aぇ!group」は「ヤベぇ!group」の悪評判…草間リチャード敬太が公然わいせつ容疑で逮捕の衝撃

  1. 6

    西武・今井達也「今オフは何が何でもメジャーへ」…シーズン中からダダ洩れていた本音

  2. 7

    阪神・才木浩人はドジャース入りで大谷と共闘の現実味…「佐々木朗希より上」の評価まで

  3. 8

    今オフ日本史上最多5人がメジャー挑戦!阪神才木は“藤川監督が後押し”、西武Wエースにヤクルト村上、巨人岡本まで

  4. 9

    ドジャース佐々木朗希もようやく危機感…ロッテ時代の逃げ癖、図々しさは通用しないと身に染みた?

  5. 10

    男子の試合はガラガラ…今年のANAオープンのギャラリー数を知って愕然としました