「急性呼吸器感染症」の5類化で医療の現場はどう変わるのか
「急性呼吸器感染症(ARI)」が2025年4月7日から感染症法上の5類感染症に位置付けられました。ARIとは、急性の上気道炎(鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎、咽頭炎、喉頭炎)または下気道炎(気管支炎、細気管支炎、肺炎)を指す病原体による症候群の総称です。
インフルエンザや新型コロナウイルス感染症はすでに5類感染症だったのですが、ARIはそれらを含む広い症候群(咳、咽頭痛、呼吸困難など)を対象にしています。つまり、感染症の原因が特定されていない段階でも監視できるようにするのも目的なのです。
では、5類化されることで現場はどう変わるのでしょうか。まず大きいのは報告義務とサーベイランス体制の強化です。これまでは「流行しているっぽい」だったものが、「実際どのウイルスが、どこでどれだけ流行しているか」を数値で追えるようになります。たとえば、地域でRSウイルスが増えてきたら、小児用の解熱薬や去痰薬の在庫調整、乳幼児を抱える家族への情報提供、さらには在宅療養者への早期介入にも役立ちます。
また、原因が特定されていない段階でも監視できるため、未知の感染症に対して早期に探知・対応できる体制を整えることも可能となります。新型コロナも最初は原因不明の呼吸器症状だったことが教訓となっているのです。