「47都道府県 日本の地元食大全」菅原佳己著
「47都道府県 日本の地元食大全」菅原佳己著
旅先で地元のスーパーに入ると、見たことも、食べたこともないその土地の食べ物との出合いがある。そんな地域の日常食=「地元食」のガイドブック第2弾。
北海道美唄市の一部のスーパーで売られている「角屋のやきそば」の流儀は「箸を使ったら負け」。袋からじかに食べるのが基本だからだ。
美唄はかつて炭鉱の街で、この地元食は炭鉱夫が汚れたままの手でも食べられるよう調理済みのやきそばを袋入りで提供したのがはじまり。
1973(昭和48)年、最後の炭鉱の閉山とともに役目を終えて姿を消したが、市民からの要望を受けて2005(平成17)年に再販されたという、まさに地元の人々に愛されてきたファストフードなのだ。
同じく北海道の増毛町では、町の飲食店で出される水のコップや、家で子どもたちが使うコップがすべてサクランボやリンゴの柄だという。
実はこれ、最北の酒蔵として知られる国稀酒造のコップ酒「国稀カップ」の空きコップなのだそう。
さらに、稚内のスーパーで売られる「たこささめ」は見た目が三葉虫を連想させ、前知識なく購入するには勇気がいる。
これは「ミズダコのエラをゆでたもの」で、見た目とは裏腹に非常に美味。食べると周りがほろりとほどけ、クリーミーな風味の後に、タコらしい歯ごたえの部分からうまみが広がるという。
そう聞くと、食いしん坊なら一度は食べてみたいと思うはず。北海道だけでこんな調子で、以降、全都道府県の140もの地元食がずらり。
キャンピングカーを駆使して、全国のご当地スーパーをくまなく巡り、自らの舌で味わい、確かめた逸品ばかりを網羅した食いしん坊必携、旅のお供にもお勧めの一冊。 (平凡社 2090円)