「ハウスメイド」フリーダ・マクファデン著、高橋知子訳
「ハウスメイド」フリーダ・マクファデン著、高橋知子訳
小説が昔に比べて売れなくなったといわれている。だが一方で書店で働いていて去年、そして今年と確実に売り上げが上がっていると実感できるジャンルがある。ホラー小説だ。
YouTubeから火が付いた「変な家」や「近畿地方のある場所について」「火喰鳥を、喰う」など実写化されたものも多い。ホラー小説年間ベストランキング本の「このホラーがすごい!」が昨年かなり久しぶりに復活したのも人気の表れだ。
ただ、今挙げたのは国内の作品。海外ホラーはそうでもないのかと思われると非常にもったいない。海外のホラーも良質なものが揃っている。今回は最近出た海外ホラー小説で最も面白かった本書を紹介したい。
本書の何がいいか。最初に伝えたいのが「登場人物が少なくて覚えやすく読みやすい」ここである。海外小説の人物名は普段馴染みがない分覚えづらい。ことミステリーやホラーで大勢の人が出てくると「え? 今死んだの誰」と読みながらパニックになった人もいるだろう。それに比べ本書の主要人物の人数は片手で収まる程度。助かる~。
話も非常にシンプルだ。前科持ちの女性ミリーが、裕福な家庭のハウスメイドとして雇われる。だがこの家の妻ニーナから不可解、不条理な扱いを受けるようになり……というあらすじだ。わかりやすい。
これだけ人物も少なく、話も簡潔だと「読みごたえが薄いのでは?」と思った方、ご安心いただきたい。むしろ全く逆で人物が少ないからこそ、メインキャラクターの造形が一人一人かなりしっかりしていて、それがこの話の格をグンとあげている。また話もシンプルだからこそ、いかに最後まで飽きさせないかの展開力が問われるのだが、そこの部分もすこぶるいい。ミステリー小説にも負けてない、伏線とどんでん返しが幾つも入れ込まれているのがこの小説の魅力のひとつだ。
ここまで説明したこの小説に内包されてる技術や面白さは最終的に「人間の怖さ」に集約されていく。幽霊や怪物の怖さもいいが人間の怖さはこの現実世界で我々が経験している怖さだ。ある意味、こんなヤバい人には気をつけようと実生活にも役立てる話でもあるので、怖いものみたさでぜひ。 (早川書房 1408円)



















