未知の世界に!音楽本特集
「名曲のたくらみ」松本直美著
音楽なしでは生きていけないという人は多いことだろう。だが、案外、聴くのは好きなジャンルに偏りがちではなかろうか。今週は、J-POPでもK-POPでもない、未知のジャンルの音楽の楽しみを教えてくれる本を紹介する。
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「名曲のたくらみ」松本直美著
歴史音楽学者の著者が、名曲と呼ばれる楽曲の歴史的背景や、その曲を聴き手はどのように受け取ってきたのかという受容の変遷を解説しながら、それぞれの曲が秘める物語を語る異色音楽ガイド。
冒頭に登場するのは、18世紀のイタリアの作曲家アントニオ・ビバルディ(1678~1741年)のバイオリン協奏曲「四季」。
作曲者が作品に添えた14行詩(ソネット)の効果をはじめ、曲の構成やブラック職場で働いていたという作曲者の生涯、教え子との秘められた恋、そして現代のバンド、ディープ・パープルの代表曲の影響などを解説しながら、人々がクラシック音楽に求めるものすべてが詰まった名曲中の名曲たるゆえんを解説。
以降、実は偽作の疑いがあるという音楽の父ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685~1750年)のオルガン協奏曲「トッカータとフーガ ニ短調 BWV565」など10曲を、知られざる驚愕のエピソードをちりばめながら解説。 (朝日新聞出版 990円)
「世界史はジャズで踊る」村井康司著
「世界史はジャズで踊る」村井康司著
ジャズをはじめとする世界的なポピュラー音楽の誕生と展開には各地で生じた人口移動が大きくかかわっている。さらに戦争や差別に対する抵抗も音楽の中に流れている。
本書は、1492年のコロンブスのアメリカ大陸発見から始まる地球規模の大きな「人と文化」の移動、そして社会の変動によって生まれた音楽のゆくえを、世界史の動きとともに概観するテキスト。
ジャズ誕生の遠因となった三角貿易による総数1233万人以上に及ぶ奴隷貿易にはじまり、ジャズという言葉の起源や、当時のミュージシャンたちの活躍ぶりなどを解説しながら、ジャズやブルース誕生の経緯をたどる。
以降、ジャズのもうひとつの故郷ニューヨーク、大西洋を渡ったジャズ、ジャズとカリブ海音楽・ブラジル音楽との相互関係、数百年の時を経てジャズやラテン音楽がアフリカに「帰還」して生まれたアフリカの大衆音楽など。多くのミュージシャンや楽曲を取り上げながら、壮大な歴史と音楽の旅を楽しむ。 (文藝春秋 1485円)
「すごすぎる音楽の図鑑」反田恭平監修 ジャパン・ナショナル・オーケストラ著
「すごすぎる音楽の図鑑」反田恭平監修 ジャパン・ナショナル・オーケストラ著
人類は太古から、音楽を楽しんできた。古代オリエント、メソポタミアでは文明発祥のころから楽器を奏でていたことが分かっているという。
音楽の基本、ドレミファソラシドの音階ができることを発見したのは、あの古代ギリシャの哲学者ピタゴラスだそうだ。鍛冶屋の職人が鉄を叩く音が、きれいに響くものとそうでないものがあると気づいて研究した結果、音階ができたという。
当初、名前がついていなかったこの7音(ドレミファソラシ)に名前をつけたのは11世紀のイタリアの修道士で、ミサで歌う「聖ヨハネ賛歌」のそれぞれの歌いだしが1音ずつ上がっていることに注目して歌詞の初めの言葉をそれぞれの音に当てはめたそうだ。
本書は、そんな音楽に関するウンチクから、オーケストラを彩る各楽器の仕組みや、名曲を残した作曲家たちの人生、名曲裏話、さらに演奏会が楽しくなるオーケストラに関する豆知識など。クラシック音楽がもっともっと身近になるトリビア満載の図鑑形式入門書。 (KADOKAWA 1485円)
「劇伴音楽入門」腹巻猫著
「劇伴音楽入門」腹巻猫著
「劇伴」とは、主に映画やテレビドラマ、アニメなどの背景に流れる音楽「劇の伴奏」のこと。
例えば映画「スター・ウォーズ」の音楽といえば、オープニングが印象的だが、作中ではそれ以外にも魅力的な音楽がたくさん流れている。そのひとつがヒロインのレイア姫が登場の際に流れる「レイア姫のテーマ」だ。同作では、このようにあるキャラクターが登場すると特定のメロディーが流れるという演出が全編にわたって行われている。さらに物語の中で対立する帝国軍と反乱軍にもそれぞれメロディーが与えられ、戦いの場面ではそれが交互に演奏され激しい戦闘を描写している。
このように各作品の中ではさまざまな音楽が流れているが、多くの人はそれを意識して聴いていない。聴いていないけれども無意識に音楽の影響を受けている。それが本来の意味での劇伴だという。
本書は、キングコングやゴジラから鬼滅の刃まで、さまざまな作品を取り上げ、劇伴の歴史とその魅力、面白さを解説。 (集英社インターナショナル 1155円)



















