重松清 中上健次に目かけられた早稲田四畳一間の下宿時代

公開日: 更新日:

「書き続ける意思」と題した卒論は、「群像」の新人文学賞評論部門に応募して、2次選考までいったんだよ。だから「俺、わりとできるじゃん」と思ったのは記憶にある。段落の合間に<そろそろ先を急ごう>とか、読み手を意識するフレーズを一丁前に挟んだりして。読み返すとオイオイって気恥ずかしくなるけれど、この頃からプロ意識のかけらみたいなものはあったのかな。おそらく。

■早稲田大学に入って、早稲田文学を卒業した

 エラソーなことをいっても、当時はどこにでもいる中途半端なダメ学生だった。ガキの頃から作文だけは人より長けているっていう自負はある。なのに、なぜ、いまの俺はこんなに冴えないのか。そんなふうに将来の展望が見えず、何をしたいのかすら分からずに悶々としていたんだ。それが、たまたま学部の掲示板にあった「『早稲田文学』学生編集員募集」という一枚の貼り紙に気づいて、運命が、人生が、変わった。当時の早稲田文学は編集委員制度で、その中に中上健次さんもいて、本当にかわいがってもらったよ。いま思い起こせば、田舎者だったからかな。ポツポツと出始めたおしゃれなカフェバーなんか行かず、朝まで飲んでホワイトを2本ぐらい開けちゃってという大学生が好きだったんじゃないかな。試験の日も赤塚不二夫さんらが行きつけの寿司屋で朝まで飲んでて、「中上さん、ボク、これから試験なんです」と言ったら、上寿司の折り詰めを持たせてくれた。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

  2. 2
    「ダルよりすごい」ムキムキボディーに球団職員が仰天!プロ3、4年目で中田翔より打球を飛ばした

    「ダルよりすごい」ムキムキボディーに球団職員が仰天!プロ3、4年目で中田翔より打球を飛ばした

  3. 3
    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

  4. 4
    22年は尻回りが推定1.5倍に増大、投げても打ってもMLBトップクラスの数値を量産した

    22年は尻回りが推定1.5倍に増大、投げても打ってもMLBトップクラスの数値を量産した

  5. 5
    若林志穂が語った昭和芸能界の暗部…大物ミュージシャン以外からの性被害も続々告白の衝撃

    若林志穂が語った昭和芸能界の暗部…大物ミュージシャン以外からの性被害も続々告白の衝撃

  1. 6
    橋下徹氏&吉村知事もう破れかぶれ?万博の赤字に初言及「大阪市・府で負担」の言いたい放題

    橋下徹氏&吉村知事もう破れかぶれ?万博の赤字に初言及「大阪市・府で負担」の言いたい放題

  2. 7
    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

  3. 8
    大谷の2023年は「打って投げて休みなし」…体が悲鳴を上げ、右肘靭帯がパンクした

    大谷の2023年は「打って投げて休みなし」…体が悲鳴を上げ、右肘靭帯がパンクした

  4. 9
    「横浜愛」貫いた筒香嘉智 巨人決定的報道後に「ベイスターズに戻ることに決めました」と報告された

    「横浜愛」貫いた筒香嘉智 巨人決定的報道後に「ベイスターズに戻ることに決めました」と報告された

  5. 10
    河野太郎大臣「私は関わっておりません」 コロナワクチン集団訴訟で責任問う声にXで回答…賛否飛び交う

    河野太郎大臣「私は関わっておりません」 コロナワクチン集団訴訟で責任問う声にXで回答…賛否飛び交う