ドラマ「夏目漱石の妻」 メリハリ芝居で素顔の文豪を造成

公開日: 更新日:

 夏目漱石が亡くなったのは1916(大正5)年のこと。今年は没後100年となる。NHK土曜ドラマ「夏目漱石の妻」は、まさに妻・鏡子を軸にして描く夫婦物語だ。脚本はベテランの池端俊策。原作は鏡子の語りを筆録した「漱石の思い出」(文春文庫)である。

 漱石を演じるのは、映画「進撃の巨人」「シン・ゴジラ」など話題作が続く長谷川博己だ。英国留学で顕在化した神経症や、小説家への夢を封印して英語教師として過ごす鬱屈を抱える漱石。家族愛に恵まれずに育ち、妻や子供たちとの接し方が不器用な漱石。長谷川は沈黙から激高まで、メリハリのある芝居で素顔の文豪を造形している。

 鏡子役は、「はじめまして、愛しています。」(テレビ朝日系)を終えたばかりの尾野真千子だ。鏡子は貴族院書記官長の長女で、お嬢さま育ち。結婚後も朝寝坊の癖が直らない。気難しい漱石に従いながらも、自分の意志を通す芯の強さを持っている。

 尾野は、漱石の言う「立派な悪妻」の喜怒哀楽を全身で見事に表現。長谷川と対峙する場面だけでも、このドラマを見る価値は十分にある。

 現在、全4回の半分まで来ており、漱石は「吾輩は猫である」を発表したばかり。49歳で亡くなるまでの10年余り、創作にまい進していく。正岡子規(加藤虎ノ介、好演)との交友も含め、物語はここからが佳境だ。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    中学受験で慶応普通部に進んだ石坂浩二も圧倒された「幼稚舎」組の生意気さ 大学時代に石井ふく子の目にとまる

  2. 2

    横浜とのFA交渉で引っ掛かった森祇晶監督の冷淡 落合博満さんは非通知着信で「探り」を入れてきた

  3. 3

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  4. 4

    国宝級イケメンの松村北斗は転校した堀越高校から亜細亜大に進学 仕事と学業の両立をしっかり

  5. 5

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  1. 6

    日本人選手で初めてサングラスとリストバンドを着用した、陰のファッションリーダー

  2. 7

    【京都府立鴨沂高校】という沢田研二の出身校の歩き方

  3. 8

    「核兵器保有すべき」放言の高市首相側近は何者なのか? 官房長官は火消しに躍起も辞任は不可避

  4. 9

    複雑なコードとリズムを世に広めた編曲 松任谷正隆の偉業

  5. 10

    中日からFA宣言した交渉の一部始終 2001年オフは「残留」と「移籍」で揺れる毎日を過ごした