愛弟子・小西博之が語る 松方弘樹さんの「豪快伝説」<下>
松方さんは「あんなに偉い親父が誰に頭を下げてんだ?」と不思議に思ったらしいんですが、男性は市川右太衛門さんでいらっしゃった。しかも、隣にはヒョロッとした色白の男の子がいて、子供同士、睨めっこしていたらしいんです。
その男の子は後の北大路欣也さん。「うちの親父が頭を下げる横に欣也がいたんだよ~」となんとも悔しそうに話す姿を思い出します。
僕と松方さんが珍しく2人きりで飲んでいるとき、たった一度だけ、お話ししていただいたエピソードもあります。松方さんと仁科亜季子さんのロマンスが取り沙汰された当時の話です。お2人の関係は不倫や略奪などと報じられたこともあって、一時期、松方さんの仕事が激減したそうなんです。そんなプー太郎状態となった松方さんを見かねて、「親父が経営していた釣り堀の姉妹店がちょうど滋賀にできてな。親父から『暇なら任せる』といわれて、そこで店番していたんだよ」と、釣り堀で暇を潰していた時期があったことを話されたんです。
そんなくすぶっていた松方さんに救いの手を差し伸べた俳優仲間が里見浩太朗さんです。里見さんは、当時、「大江戸捜査網」(テレビ東京系)に主演されていたのですが、「僕は降板するので、代わりに、松方弘樹を使ってもらえませんか」と制作陣に掛け合ってくれたそうなんです。ご自身のレギュラー、しかも主役の座を松方さんに譲られたというじゃないですか。松方さんは「里見さんのおかげだ。あのときは助けてもらった」と目を細めながらおっしゃってましたね。