「ふたりの歌川」武内涼著
「ふたりの歌川」武内涼著
琉球使節の行列を描いていた火消同心の安藤源右衛門に、ぼろ衣を着た大男が声をかけた。「線が、悪い」。むっとした息子の徳太郎に源右衛門は、その男が日本一の絵師、葛飾北斎だと教える。
徳太郎は絵双紙屋で北斎の狂歌絵本を見て「何て、上手い絵なんだ!」と手が震えた。徳太郎の画才を認めた定火消与力・岡嶋の勧めで、徳太郎は自分の絵を見てもらうため北斎の住まいを訪ねるが、北斎は忙しいと出かけてしまう。北斎の娘、お栄は「仕事場を見て行きなよ」と鎮西八郎為朝の絵を見せた。その絵からは描かれた男たちの気迫が波動となって漂ってくる。
浮世絵師・歌川広重(徳太郎)、歌川国芳、葛飾応為(お栄)を描く時代小説。 (朝日新聞出版 2200円)