「七人の記者」一本木透著

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「七人の記者」一本木透著

 宝城大学2年の美ノ輪七海は、学内の「宝大タイムス」の記者。ある日、七海は同じ下宿先の友人が、次期大学総長選の有力候補で、現政権と太いパイプを持つ小笠原教授から性被害を受けていることを聞かされた。しかも、被害に遭っているのは、少なくとも5人以上はいるという。

 被害者のプライバシーに配慮しつつ、何とかこの窮状を訴えられないか。学生新聞で訴えるには限界があると思い、七海は顔なじみのタウン誌編集局記者の虎吹徹三や、大学OBのカメラマン・天多教之、東都新聞の元社会部デスク志村孝明、CBSの元報道局デスクの古手川千秋らに相談を持ち掛けるのだが……。

だから殺せなかった」で第27回鮎川哲也賞優秀賞を受賞し、以来社会派ミステリーを世に送り出してきた元新聞記者の著者による最新作。政権に牙を抜かれたメディアの世界で左遷され自分を見失っていた各種メディアの記者たちが、ひとりの学生記者の情熱に動かされて結集していく様子が圧巻。フィクションといえども、圧力で真実が消されていく様子など、現場にいた著者のリアルが痛いほど伝わってくる。

(朝日新聞出版 2200円)


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