社会派映画「デトロイト」 なぜ賞レースで黙殺されたのか

公開日: 更新日:

 アメリカでは、白人警官による黒人への過剰な暴力がニュースになるのはしょっちゅうだ。暴動を繰り返してきた黒人への恐れと差別意識がその背景にあるといわれるが、その原点というべき50年前の黒人虐待事件を描いた映画「デトロイト」が公開され話題になっている。

「ハート・ロッカー」「ゼロ・ダーク・サーティ」の監督&脚本家コンビによる最新作。前2作同様、重厚なタッチの社会派ドラマで、キャスリン・ビグロー監督得意のバイオレンス描写も容赦ない。映画批評家の前田有一氏も作品の完成度の高さには舌を巻く。

「古い事件の映画化ですが、テーマがきわめて現代的で興味深い。もともと2014年にミズーリ州で起きた、白人警官による黒人青年射殺をきっかけに発生した黒人暴動に関心を寄せていたビグロー監督に、盟友で脚本家のマーク・ボールが50年前の史実を紹介して始まった企画です。あえて時系列順に虐待と尋問シーンを撮ることで俳優たちを精神的に追い詰め、演技を超えたすさまじい恐怖と痛みを観客に伝えることに成功しています」

 舞台は1967年のデトロイト。暴動で街が混乱する中、モーテルに集まった黒人の一人が悪ふざけでおもちゃの銃を鳴らしたところ、踏み込んできたレイシストの白人警官らに尋問されることに。やがて警官の常軌を逸したサディストぶりはエスカレート、歴史に残る惨劇の一夜が幕を開ける。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    世良公則氏やラサール石井氏らが“古希目前”で参院選出馬のナゼ…カネと名誉よりも大きな「ある理由」

  2. 2

    新横綱・大の里の筆頭対抗馬は“あの力士”…過去戦績は6勝2敗、幕内の土俵で唯一勝ち越し

  3. 3

    年収1億円の大人気コスプレーヤーえなこが“9年間自分を支えてくれた存在”をたった4文字で表現

  4. 4

    浜田省吾の父親が「生き地獄」の広島に向ったA.A.B.から80年

  5. 5

    山尾志桜里氏は出馬会見翌日に公認取り消し…今井絵理子、生稲晃子…“芸能界出身”女性政治家の醜聞と凄まじい嫌われぶり

  1. 6

    「徹子の部屋」「オールナイトニッポン」に出演…三笠宮家の彬子女王が皇室史を変えたワケ

  2. 7

    “お荷物”佐々木朗希のマイナー落ちはド軍にとっても“好都合”の理由とは?

  3. 8

    ドジャース佐々木朗希 球団内で「不純物認定」は時間の問題?

  4. 9

    くら寿司への迷惑行為 16歳少年の“悪ふざけ”が招くとてつもない代償

  5. 10

    フジ親会社・金光修前社長の呆れた二枚舌…会長職辞退も「有酬アドバイザー」就任の不可解