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碓井広義
著者のコラム一覧
碓井広義上智大学教授(メディア文化論)

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授、東京工科大学教授を経て現在、上智大学文学部新聞学科教授。専門は放送を軸としたメディア文化論。著書に「テレビの教科書」ほか。

脚本家・坂元裕二が「anone」に散りばめたフェイクの視点

 広瀬すず主演「anone(あのね)」のキーワードは、「フェイク(ニセ物)」だ。このドラマには、物語の低音部となる1万円のニセ札作りだけでなく、いくつものフェイクが登場する。

 辻沢ハリカ(広瀬)には祖母に可愛がられて暮らした思い出がある。しかし実際には施設で虐待を受けて育った。思い出は自分の心を守るための偽りの記憶だったのだ。亡くなった夫と印刷所を経営していた林田亜乃音(田中裕子)には19歳で家出した血のつながらない娘がいる。だが今は、ハリカに対して母親のような気持ちを抱いている。

 また、夫や息子と心が通わない青羽るい子(小林聡美)は、高校時代に望まぬ妊娠で死産した娘の姿が見える。セーラー服の幻影と会話することで自分を保っていた。

 そして元カレー屋の持本舵(阿部サダヲ)は医者から、がんで余命半年と言われ、これまでの人生が違って見えてきた。さらに印刷所の元従業員、中世古理市(瑛太)は2つの家庭と、秘密の作業部屋を持っている。

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