著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

脚本家・坂元裕二が「anone」に散りばめたフェイクの視点

公開日: 更新日:

 広瀬すず主演「anone(あのね)」のキーワードは、「フェイク(ニセ物)」だ。このドラマには、物語の低音部となる1万円のニセ札作りだけでなく、いくつものフェイクが登場する。

 辻沢ハリカ(広瀬)には祖母に可愛がられて暮らした思い出がある。しかし実際には施設で虐待を受けて育った。思い出は自分の心を守るための偽りの記憶だったのだ。亡くなった夫と印刷所を経営していた林田亜乃音(田中裕子)には19歳で家出した血のつながらない娘がいる。だが今は、ハリカに対して母親のような気持ちを抱いている。

 また、夫や息子と心が通わない青羽るい子(小林聡美)は、高校時代に望まぬ妊娠で死産した娘の姿が見える。セーラー服の幻影と会話することで自分を保っていた。

 そして元カレー屋の持本舵(阿部サダヲ)は医者から、がんで余命半年と言われ、これまでの人生が違って見えてきた。さらに印刷所の元従業員、中世古理市(瑛太)は2つの家庭と、秘密の作業部屋を持っている。

 ニセ物をそこに置くことで、本物とか本当とされるものの意味や本質が見えてくる。またニセ物と呼ばれるものが持つ隠れた価値も浮上してくるだろう。

 このドラマは、親子、夫婦、そして他者との関係だけでなく、人の生き方さえもフェイクという視点から捉え直そうとしている。脚本家・坂元裕二の野心作だ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐藤二朗の地上波ドラマはしばらく厳しいが…橋本愛の事態はもっと深刻

  2. 2

    小池栄子が一番の被害者? 佐藤二朗“ハラスメント騒動”に足引っ張られた「さよならノワール」の評価は上々

  3. 3

    戸郷が離脱、則本メッタ打ちで巨人が緊急補強へ…候補に挙がる「オリックス投手」の名前

  4. 4

    安青錦は「カラダ」より「アタマ」に課題…2ケタ勝利で大関復帰を果たせるか

  5. 5

    『ひよっこ』再放送記念、神回「ビートルズがやって来る」再録

  1. 6

    福山雅治も結婚後は苦戦…亀梨和也も正念場を迎えている

  2. 7

    佐藤二朗騒動の余波!「福田組」の長澤まさみへの“ハラスメント”舞台挨拶の悪ノリ動画が再注目…女性視聴者は嫌悪

  3. 8

    山田涼介が「令和最強アイドル」と評されるワケ…主演ドラマ「一次元の挿し木」は玉森裕太を三歩リード

  4. 9

    高市首相が衆院集中審議に“出たくない”とブー垂れ…身内の自民国対「もう疲れ果てた…」ヘトヘトのお気の毒

  5. 10

    ベタ折れで肝いり法案断念の維新 吉村代表と馬場前代表にミゾで「国会組」vs「大阪組」のバトル勃発