興収イマイチも…本格ヤクザ映画「孤狼の血」を評論家絶賛

公開日: 更新日:

 冒頭の豚の糞を食わせるリンチシーンに始まり、対立する組の人間の耳を食いちぎったり、女性の性器をもじった親父ギャグを連発したり、えげつない描写がてんこ盛り。

「お上品で物足りない昨今の日本映画界において、忖度なしの刺激的な世界を描いてくれた。個人的には今年の暫定ベストワン」と絶賛するのは映画評論家の秋本鉄次氏だ。

「消灯された暗い劇場で見る映画というものは、行儀の悪いものだと再認識させてくれました。描写のエグさや下品なセリフの数々……。僕もそのひとりですが、非日常的なバイオレンスに憧れを抱く層は必ずいる。女優陣も『仁義なき戦い 広島死闘篇』(73年)で梶芽衣子が演じた役がそうであったように、単なる彩りに甘んじるのではなく、真木よう子も2番手の阿部純子も、したたかさを持ち合わせた女性を好演していました」

 役者人生40年の節目に同作を選んだ役所や、俳優の顔が定着したピエール瀧、ベテランの石橋蓮司あたりはこれまで演じてきた役柄と同質で安定感抜群だったが、それは逆を言えば意外性に乏しいともいえる。その中で「助演の松坂桃李が光っていた。上層部からの内偵指示を素直に受け入れたり、表面的な悪徳デカを見たままに評価してしまったり。めまぐるしく変わる周囲に翻弄され、右往左往する新人デカを好演していました。出番が増える後半はさらにいい」(前出の大高氏)。

 仕事に疲れたオトーサンが見れば、劇場を出るときは肩で風を切っているに違いない。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    農水省「おこめ券」説明会のトンデモ全容 所管外の問い合わせに官僚疲弊、鈴木農相は逃げの一手

  2. 2

    早瀬ノエルに鎮西寿々歌が相次ぎダウン…FRUITS ZIPPERも迎えてしまった超多忙アイドルの“通過儀礼”

  3. 3

    2025年ドラマベスト3 「人生の時間」の使い方を問いかけるこの3作

  4. 4

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  5. 5

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  1. 6

    大炎上中の維新「国保逃れ」を猪瀬直樹議員まさかの“絶賛” 政界関係者が激怒!

  2. 7

    池松壮亮&河合優実「業界一多忙カップル」ついにゴールインへ…交際発覚から2年半で“唯一の不安”も払拭か

  3. 8

    維新の「終わりの始まり」…自民批判できず党勢拡大も困難で薄れる存在意義 吉村&藤田の二頭政治いつまで?

  4. 9

    日本相撲協会・八角理事長に聞く 貴景勝はなぜ横綱になれない? 貴乃花の元弟子だから?

  5. 10

    SKY-HI「未成年アイドルを深夜に呼び出し」報道の波紋 “芸能界を健全に”の崇高理念が完全ブーメラン