追悼・桂歌丸さん 笑点だけでは語れない落語界の大功労者

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 年を取るのも芸のうち――。こんな言葉もあるが、自らの病気すらも笑いにかえ、最後まで高座への意欲を見せていた。落語家の桂歌丸(本名・椎名巌=しいな・いわお)さんが2日午前11時43分、慢性閉塞性肺疾患のため横浜市内の病院で死去した。享年81。落語芸術協会会長で、日本テレビ系「笑点」の5代目司会者を長く務めた。

 中学3年で落語家になった歌丸さんは若いころから病弱で、数々の病を患い、ついたあだ名は「病気のデパート」。大喜利では「半分棺桶」「生きたミイラ」などと体形や病気をダシにイジられるのも恒例だった。今年4月24日に入院後、重篤な肺炎を患ったが、今月1日まで鼻に酸素チューブをつけ、車椅子に乗って「笑点」に出演。まさしく生涯現役を貫いた。演芸評論家の吉川潮氏がこう話す。

「歌丸さんは『笑点』という国民的演芸番組において先代円楽に次ぐ功労者であったのは間違いありません。しかしながら、決して『笑点』だけで全部を語れる落語家ではありません」とこう続ける。

「歌丸さんには2人の恩人がいました。桂米丸と立川談志。米丸師匠は兄弟子にして後の師匠。談志師匠は歌丸さんを『笑点』に引っ張った恩人でもあります。ですが、米丸師匠には新作ではかなわない。同世代とはいえ談志師匠には古典ではかなわない。同じことをやってもこの2人にはかなわないということで、歌丸さんは晩年、三遊亭円朝作の怪談話などに挑戦したのだと思います。歌丸さんは口跡のいい人で、笑いよりも語り口で聞かせる物語性を追求していました。高座は国立演芸場の名物で、最後まで寄席を大事にされた方。落語界の大功労者です」

「楽をしようと思ったら苦しまなきゃ。死んで目をつぶる時に楽になりてえから頑張ってる」

 こんな含蓄深い言葉も残した歌丸さん。大往生の落語家人生だった。

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