トリの談志が遅刻するとヒザ代わりがつなぐことに…

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 林家一楽という芸名をもらって寄席に出るようになったとはいえ、池袋演芸場が多かった。当時は端席といわれていたが、厳しい客が多く、若手にとっては格好の修業の場である。

「1980年代、改築前の池袋は古びた寄席で客が少なかった。それなのに、当時協会に在籍していた談志師匠は好んで出てました。ただ、忙しい方なのでしょっちゅう遅刻する」

 トリの談志が遅れると、ヒザ代わり(トリの前の色物)がつなぐことになる。

「あたしも一度ありました。映画の撮影の仕事が延びて40分遅れると楽屋に連絡が入った。談志師匠には、『ヒザ代わりはトリが遅れてることを客に気付かせてはならない』という美学がある。でも、若手の紙切りが汗びっしょりかきながら30分以上切ってるの見りゃ、客は気付きますよ。談志、まだ来てないなって(笑い)」

 遅れた時の談志は、高座に上がると気を入れて演じ、出来がいいとわかっているから客は遅刻を許す。

「談志師匠のいいところは、どんな若い芸人にも、面倒をかけると必ず『ありがとう』と言ってくれる。あたしにもそう言って、終演後行きつけのバーでごちそうしてくれました」

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