著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

冒頭から涙が…観客の心揺さぶるレッドフォードの深い皺

公開日: 更新日:

 映画を見て画面に映る俳優の皺(しわ)に泣ける、そんな初めての経験をした。米映画の往年の大スター、ロバート・レッドフォードが主演した「さらば愛しきアウトロー」である。レッドフォードの顔に深く刻まれた皺を見た途端、涙がにじんできた。

 映画は冒頭、銀行に押し入り自動車で逃走するレッドフォード扮するフォレスト・タッカーなる男の目元をアップにする。ここで、その深い皺があからさまになる。次に全体の皺を写していく過程で涙は収まりがつかなくなった。

 多数ある彼のかつての作品で精悍(せいかん)な二枚目ぶりを知っている。しかし、だからといって皺だらけになったレッドフォードに何か憐憫(れんびん)のような思いを抱き、涙が出たというわけではない。正真正銘、皺そのものが見事なのだ。皺がレッドフォードの顔を以前にも増して風格あるものにしている。その魅力に涙腺が反応したとしかいいようがない。

 俳優の皺といえば、最近ではクリント・イーストウッドが知られる。ただ、イーストウッドの皺を見ても涙は出ない。彼の皺は役柄からの延長線上の証しのような趣があり、妙な安心感があるからだ。もちろん、イーストウッドの皺もまた見事だが、顔全体との一体感が強く、すんなりと受け止めることができる。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    横浜とのFA交渉で引っ掛かった森祇晶監督の冷淡 落合博満さんは非通知着信で「探り」を入れてきた

  2. 2

    複雑なコードとリズムを世に広めた編曲 松任谷正隆の偉業

  3. 3

    中学受験で慶応普通部に進んだ石坂浩二も圧倒された「幼稚舎」組の生意気さ 大学時代に石井ふく子の目にとまる

  4. 4

    ドジャース内野手ベッツのWBC不参加は大谷翔平、佐々木朗希、山本由伸のレギュラーシーズンに追い風

  5. 5

    「年賀状じまい」宣言は失礼になる? SNS《正月早々、気分が悪い》の心理と伝え方の正解

  1. 6

    国宝級イケメンの松村北斗は転校した堀越高校から亜細亜大に進学 仕事と学業の両立をしっかり

  2. 7

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  3. 8

    維新のちょろまかし「国保逃れ」疑惑が早くも炎上急拡大! 地方議会でも糾弾や追及の動き

  4. 9

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  5. 10

    【京都府立鴨沂高校】という沢田研二の出身校の歩き方