「大御所扱いされるってえのも考えもの。まず仕事が減る」

公開日: 更新日:

 馬風が仲たがいした立川談志と偶然会った場に私は居合わせた。某映画監督が演芸の本を刊行した際の出版記念パーティーの席で、ご両人が同じテーブルに座ったのだ。

 落語協会会長に就任したばかりの馬風は、「兄さん。このたび、あたしが協会を束ねることになりました」と挨拶した。しかし、談志はちょっとうなずいただけでそっぽを向いた。当時、立川流顧問の私は談志の隣にいたので、「馬風師匠が会長になったんです」と耳打ちすると、談志は、「トップに立ったということか。そりゃたいしたもんだ」と感慨深げに呟いたものだ。もちろん馬風に聞こえないように。

「そんなことがあったのか。あの兄さんの性格じゃ、面と向かって『おめでとう』とは言えなかったんだろうな」

 それでも馬風のことを認めていたのは確かで、本心では仲直りしたかったはず、と拝察する。

「談志一門の連中はずっとうちに出入りしてたからね。左談次、ぜん馬、龍志なんかよく来てたよ。兄さんが知らねえわけないんだ。きっと黙認してたんだろう。仲直りできなかったのは、俺も心残りだね」

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    中学受験で慶応普通部に進んだ石坂浩二も圧倒された「幼稚舎」組の生意気さ 大学時代に石井ふく子の目にとまる

  2. 2

    横浜とのFA交渉で引っ掛かった森祇晶監督の冷淡 落合博満さんは非通知着信で「探り」を入れてきた

  3. 3

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  4. 4

    国宝級イケメンの松村北斗は転校した堀越高校から亜細亜大に進学 仕事と学業の両立をしっかり

  5. 5

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  1. 6

    日本人選手で初めてサングラスとリストバンドを着用した、陰のファッションリーダー

  2. 7

    【京都府立鴨沂高校】という沢田研二の出身校の歩き方

  3. 8

    「核兵器保有すべき」放言の高市首相側近は何者なのか? 官房長官は火消しに躍起も辞任は不可避

  4. 9

    複雑なコードとリズムを世に広めた編曲 松任谷正隆の偉業

  5. 10

    中日からFA宣言した交渉の一部始終 2001年オフは「残留」と「移籍」で揺れる毎日を過ごした