著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

シリーズ6弾「ドクターX」を支える定番だからこその新規性

公開日: 更新日:

 2012年に始まった「ドクターX~外科医・大門未知子~」も、今期で第6シリーズとなる。いかなる場合も最後は天才外科医の活躍で大団円。それは視聴者も承知の上だが、以前と変わらないだけでは飽きてしまう。

 基本的な世界観は維持しながら、常に意外性を盛り込んでいくことが肝心だ。このシリーズはその努力を忘れていない。

 第4話では有名陸上選手の「滑膜肉腫」に対処しながら、同時に外科部長・潮(ユースケ・サンタマリア)の母親(倍賞美津子)が、「認知症」ではなく「水頭症」であることを突き止めた。

 また先週の第6話。難病である「後腹膜原発胚細胞腫瘍」の少女を登場させたが、本命の手術は売名のために少女を支援していた青年実業家(平岡祐太)の「肝細胞がん」のほうだった。

 いわばストーリーの2車線化だ。ある患者の難しい手術が見せ場と思わせて、途中から別の患者のもっと困難な現場へと移っていく。高速道路で一気に追い越し車線に入っていく感じだ。

 しかもこの回の大門は、少女の腫瘍摘出と左肺下葉切除という2つの手術を連続で行ったことで、盟友である麻酔医・城之内(内田有紀)と対立してしまう。制作陣は「神の手」を支える女神、城之内との関係を揺さぶることで見る側に緊張感を与えたのだ。定番だからこその新規性。それがこのドラマを支えている。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  3. 3

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  4. 4

    日吉マムシダニに轟いた錦織圭への歓声とタメ息…日本テニス協会はこれを新たな出発点にしてほしい

  5. 5

    巨人正捕手は岸田を筆頭に、甲斐と山瀬が争う構図…ほぼ“出番消失”小林誠司&大城卓三の末路

  1. 6

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  2. 7

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    「ばけばけ」苦戦は佐藤浩市の息子で3世俳優・寛一郎のパンチ力不足が一因