著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

終戦75年の節目に朗報 戦時下描くNHK「太陽の子」に期待を

公開日: 更新日:

 気になって仕方なかった。今年は終戦から75年が経つ。その節目の年に合わせた戦争映画が、邦画大手になかったからだ。なぜか。戦争映画に対する製作者や監督たちの熱意が下がっているのではないか。加えて、今ではぐらついているが、夏に東京オリンピック・パラリンピックも予定されている。興行的に不利になりかねない。そんなところだろうか。

 それが突然現れた。NHKが米国の会社と共同制作する「太陽の子」だ。ドラマと映画が作られる。太平洋戦争末期、海軍から新型爆弾の開発を命じられた大学の研究者の話だという。日本は被爆国だが、原子爆弾の開発を戦時中に行っていたことは知られている。そこに焦点を当てる。柳楽優弥三浦春馬有村架純らが主要な役を担う。

 中身を聞けば、伝統的に映画会社が作ってきた戦争映画の大作とは違うのがわかる。ただ大作ではなくても、映画版では重要な問題提起とともに、より広い客層の人たちを視野に入れたスケール感をもつ作品が望ましい。脇を固めるベテラン勢にも重厚さが欲しい。

 加えて、一言いいたい、米国の会社が制作に参加しているからといって、日本側の原爆開発の話が米国の原爆投下の免罪符になってはならない。原爆開発にかかわる研究者の苦悩は、戦争の本質に迫る普遍的な広がりをもつべきだろう。情緒に逃げてはならない。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    侍ジャパンに日韓戦への出場辞退相次ぐワケ…「今後さらに増える」の見立てまで

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  4. 4

    “新コメ大臣”鈴木憲和農相が早くも大炎上! 37万トン減産決定で生産者と消費者の分断加速

  5. 5

    侍J井端監督が仕掛ける巨人・岡本和真への「恩の取り立て」…メジャー組でも“代表選出”の深謀遠慮

  1. 6

    巨人が助っ人左腕ケイ争奪戦に殴り込み…メジャー含む“四つ巴”のマネーゲーム勃発へ

  2. 7

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  3. 8

    支持率8割超でも選挙に勝てない「高市バブル」の落とし穴…保守王国の首長選で大差ボロ負けの異常事態

  4. 9

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 10

    和田アキ子が明かした「57年間給料制」の内訳と若手タレントたちが仰天した“特別待遇”列伝