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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

吉川晃司がハマり役「由利麟太郎」に足りないエロスと猟奇

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 よくぞ原作として思いついたものだ。由利麟太郎は横溝正史が生み出した探偵だが、登場したのは金田一耕助より早く、戦前のことだ。今回の「探偵・由利麟太郎」では時代を昭和初期から現代に、舞台も東京から京都へと設定を移している。

 由利は元・警視庁捜査一課長にして犯罪心理学者。演じる吉川晃司のグレーがかった髪と黒のロングコートが渋カッコいい。助手の三津木(志尊淳)を従えて、等々力警部(田辺誠一)の捜査に協力していくのだが、そのちょっと浮世離れしたキャラクターが吉川によく似合う。はまり役だ。

 毎回、原作小説はあるものの、物語は大幅にアレンジされている。ただし、女性が事件に深く関わる点は共通だ。これまでに新川優愛や村川絵梨らが登場した。また殺される女性も多く、柳ゆり菜や阿部純子が美しき死体となってきた。

 このドラマで見るべきは、吉川の寡黙な探偵ぶりと昭和ミステリー風の謎解きである。ただ、全体がやや地味なことは否めない。

 由利の最大の武器は「観察眼」とおとなしいものだし、原作が持つ猟奇性とエロスも不足している。うまく作れば、往年の「土曜ワイド劇場」(テレビ朝日系)の人気企画「江戸川乱歩の美女シリーズ」のようになったかもしれないのだ。

 最終章の「蝶々殺人事件」前後編では横溝ファン、そして由利先生ファンをうならせて欲しい。

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