草刈正雄 コロナ禍で考えた家族と仕事「後悔ないように」

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あと何年仕事ができるんだろう

 今月、68歳の誕生日を迎えた。自身の今後についても思いがよぎる。

「65歳を過ぎたときから、体もガクッときて自覚して、晩年のことを考えます。あと何年仕事ができるんだろうとかね。明るく振る舞っているけど、素の自分はノミの心臓で、マイナス思考なんですよ。失敗を引きずったり、体調の良し悪しを気にして寝込んでしまうこともあります。若い人は分からないと思いますが、体は徐々に衰えるんじゃなくて、ある日、ほんとうにガクッときますよ。最近、結構病院に行くのが好きになってね。医者の先生にも『草刈さんはちょっと神経質だからね』と言われるのですが、これをああしてこうしてと細かく指示されると安心なんですよ」

■「嫌なこと」でもやるのが役者

 来た仕事はなるべく受けている。俳優業でも、バラエティーでも与えられた現場を全力で取り組む。基本的には役を選ぶことはない。取材中も、時折、記者に「ごめんね。わかりにくいかな」と気遣いを見せる。スタッフへの口調も穏やかだ。

「60代半ばで『真田丸』に出合えたわけですから、仕事を選ばなくてよかった。嫌でもやるのが役者ですから、たとえばNHK『鑑賞マニュアル 美の壺』も、着ぐるみを着て踊らされる演出もあったんです。でも、OA見て面白いじゃんと思ったり、もちろん、やってみてダメじゃんと思ったら、なぜだったかと考えることもできますからね。気づいたらこの番組も12年目ですよ。こんなはずじゃないと、くすぶっているサラリーマンの方々も、気が進まない仕事も受けてみると可能性が開けてくることはあるんじゃないかな。それから、素直になると生きやすくなるよね。難しいことだけど、60歳を越えてから僕は結構、意識するようになりました。たまに若い俳優さんが現場で固まっていると、間に入りたくて寂しさを感じてしまって。自分は性格的にまとめ役ではないけど、コロナ時代ですから人とのつながりを大切にしたいです」

(聞き手=小野真依子/日刊ゲンダイ)

▽くさかり・まさお 1952年福岡県出身。69年デビュー。70年に資生堂のCMに起用され、以来、俳優としての活動も開始し、74年に「卑弥呼」で映画デビュー。「復活の日」「汚れた英雄」など話題作で主演するほか、テレビドラマや舞台で活躍。2016年NHK大河ドラマ「真田丸」、19年連続テレビ小説「なつぞら」に出演。新刊「人生に必要な知恵はすべてホンから学んだ」(朝日新書)は、俳優生活50年で出合った台本から感銘を受けた名ぜりふと自身の生き方を独白した一冊。

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