鈴木敏夫
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鈴木敏夫スタジオジブリ代表取締役プロデューサー

1948年、愛知県名古屋市生まれ。72年に徳間書店に入社。「週刊アサヒ芸能」「アニメージュ」編集部を経て、84年に「風の谷のナウシカ」を機に映画の世界に。89年からスタジオジブリ専従。「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」「かぐや姫の物語」など、宮崎駿、高畑勲と共にジブリ作品を生み出す。4月29日から公開の宮崎吾朗監督作品「アーヤと魔女」もプロデュース。(撮影:荒木経惟)

風立ちぬ出会いのシーン「故郷は緑なりき」を宮さんに提案

公開日: 更新日:

 宮崎駿監督や高畑勲監督と多くのアニメーション映画を作ってきた、スタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫。1948年、愛知県名古屋市に生まれた彼は、子供の頃から洋邦の垣根なくあらゆる作品を見ていた、無類の映画ファンでもあった。

■35年後のファンレター

「親父が邦画、おふくろが洋画のファンで、小さい頃から2人に連れられて、映画を見ていました。僕が最初に好きになった女優は、中学2年生になる直前に見たディズニー映画『罠にかかったパパとママ』(1961年作、日本公開1962年)のヘイリー・ミルズ。双子を1人2役で演じた、当時15歳の彼女が可愛くて。翌年公開の主演作『ポリアンナ』(1960年作)でさらに好きになって、初めて英語でファンレターを出したんです。返事は来なかったんですが、後年、ジブリの映画をディズニーが世界配給してくれることになって、ディズニー本社へ行ったときにね、好きなディズニー作品を聞かれて、僕はヘイリー・ミルズの映画が好きだったと言いました。そしたら後になってヘイリー・ミルズ本人から手紙をもらったんです。ファンレターを書いてから、実に35年後の返事でしたよ」

 彼はファンになると、思いは一途。それは大人になってからも変わらなかった。

「子供の頃、テレビで木下惠介監督の映画『野菊の如き君なりき』(1955年)をよく放送していました。これは伊藤左千夫の小説『野菊の墓』を映画化したもので、主人公の少年が従姉で年上の女性・民さんを好きになる悲恋物語です。そのヒロインを演じていたのが有田紀子さん。彼女はこれがデビュー作でしたが、その清純な雰囲気が民さんにピッタリで、僕は大好きでした。でも有田さんは、結婚して1964年に芸能界を引退してしまった。やがて1972年に僕は徳間書店に入社して『週刊アサヒ芸能』の記者になるんですが、彼女が今どうしているかを記事にして、追いかけようと思ったんです。そしたら四国で居酒屋の女将をしていることがわかった。さすがに取材費が出なくて四国へ行くことはできなかったですが、正直言えば会ってみたかったですね」

「故郷は緑なりき」を見たのは中1のとき

 中学時代、ほかにも彼の胸に強く刻まれた女優がいる。それが佐久間良子である。

「僕が中学1年生のときに、佐久間良子さん主演の青春映画『故郷は緑なりき』(1961年)が公開されました。これは富島健夫の原作を村山新治監督が映画化したもので、海辺の町を舞台に水木襄さん演じる貧しい青年と、佐久間さん扮する裕福な家庭の少女との純愛を描いているんです。一番衝撃的だったのはそれまで2人は純愛を育んできたのに、最後の方に水木さんが佐久間さんを雪の降るお墓の前で襲う場面があった。見たのが中学生ですから、ドキドキしました。実はこの作品、ジブリの映画にも少し影響を与えているんです。主人公の2人は満員列車でもみくちゃにされて、男の子が帽子を落とし、女の子が拾って、そこから彼らは親しくなる。それで『風立ちぬ』(2013年)を作っているときに、宮さん(宮崎駿)から『(主人公の)二郎と菜穂子の出会いを、どうしようか?』と相談されたので、2人は列車に乗っている設定だから、帽子を出会いのきっかけにしたらどうですかと、この映画のことを思い出して提案したんです」

何げない会話からアイデアが次々と

 ジブリ映画では、監督とプロデューサーの何げない会話の中からさまざまなアイデアが生まれてきた。そういう意味では彼の映画体験も、ジブリ作品の一部になっている部分がある。

 今回からそんな鈴木敏夫が映画で見て、ジブリ映画に起用して実際に出会って、魅力を感じた女優たちにスポットを当てていく。いわばこれは映画好きな団塊の世代プロデューサーによる、体験的な生きた女優論である。

(聞き手=金澤誠/映画ライター)

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