著者のコラム一覧
細田昌志ノンフィクション作家

1971年、岡山市生まれ、鳥取市育ち。CS放送「サムライTV」キャスターから放送作家としてラジオ、テレビの制作に携わり、ノンフィクション作家に。7月に「沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修評伝」(新潮社)が、第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。

山口洋子と姫のホステスたちはキックボクシングに熱狂

公開日: 更新日:

 ある時、洋子が司会を務めるワイドショー「スタジオ0 おんなのテレビ」の月曜日に、沢村忠がゲスト出演したことがあった。言うまでもなく「YKKアワー・キックボクシング」のプロモーションである。森が「姫」の顧客だったこともあって、事はスムーズに運んだ。

 本番終了後「私も一度見てみたいわ、キックボクシング」と山口洋子が言った。

 そこで森忠大は、チケットを10枚ほど渡した。リングサイドの特等席に陣取った洋子とホステスは、最初こそおとなしく見ていたが、次第に熱くなり「いけー!」「そこだー!」「やれー!」と騒ぎ始めた。他の観客が呆気に取られる様子を見て「いいぞ、もっと騒げ」と森はほくそ笑んだ。若くて美しい女が、新興のプロスポーツに夢中になっていることを周知させるいい機会だからだ。世の流行の条件が「いかに若い女が食いつくか」というのは今も昔も変わらない。

■「ところでママ、時間ある?」

 メインイベントに登場した沢村忠が派手なハイキックでタイ人を倒すと、女たちの絶叫は最高潮に達した。試合終了後リングサイドに森忠大が顔を出すと「いやあ、もう最高! 面白かった。ぜひ、また見たーい」と洋子は興奮気味に言った。

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