スカパラ茂木欣一さんの原点「フィッシュマンズ」音楽活動30周年を振り返る

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 東京スカパラダイスオーケストラの茂木欣一(53)は今年で音楽生活30周年。そのキャリアは明治学院大学在学中に結成した学生バンド「フィッシュマンズ」に始まり、2001年に正式加入したスカパラでも20年間、ドラマーとして活動するが、今の状況をどう感じている?

 ◇  ◇  ◇

「幸せすぎますよ。30年間、音楽への情熱が消えることは一度もなかった。これは運が良かったと思っていて、夢中になれる楽曲や演奏する仲間がいたからこそですよね」

 1991年にメジャーデビューを果たして以降は“孤高のバンド”として知名度を広げ、ワンマンライブを開催するなど順風満帆な活動にみえたが、99年にボーカルの佐藤伸治さん(享年33)が心不全で急逝。今まで多くは明かされてこなかったが、9日公開のドキュメンタリー映画「映画:フィッシュマンズ」(ACTV JAPAN/イハフィルムズ配給)では、赤裸々に真実が語られている。これは佐藤氏に向けてメッセージでもある?

「佐藤くんへのメッセージ、すごいあると思いますね。命を懸けて言葉を紡いで、魅力的なメロディーを作ってきた人。今回、関わってきたメンバーがカメラの前で心情を吐露する様子を見て、スッキリしました。僕の中にも、あの頃、皆はどんな気分だっただろう? といった思いが何十年も残っていたんでしょうね」

フィッシュマンズでメジャーデビュー

 サブスク解禁を機に、世界的規模の音楽レビューサイト「Rate Your Music」にランクインするなど、海外からも注目されている。

「正直、90年代はここまで聞かれてなかったと思います。僕も佐藤くんも、ずっとフィッシュマンズを続けていきたいと思っていた矢先に佐藤くんが亡くなってしまった。2005年以降、再始動したのは、99年以降の世界をやり切りたいと考えたから。ライブで、佐藤くんが見られなくなってしまった景色を僕の目で代わりに見て、2000年以降、フィッシュマンズの音楽が国内外問わず、愛してもらっていることを、今度、佐藤くんに会ったときにこう報告したいんです。『君の音楽は世代を超えて多くの人に届くようになっているよ』って」  

「今を生きていること」を表現

 フィッシュマンズの活動中、スカパラはどう見えていた? 
 
「僕、デビュー盤とか買ってましたからね! 東京の街をそのまま切り取って音にしたようなインストゥルメンタルがかっこよくてね。フィッシュマンズの活動が止まってしまい、それでもありがたいことにスカパラになる人生が待っていて、躊躇せずに飛び込めたのは音楽性が似てなかったのも大きい。そこから20年間続けてこられたのは、ライブへの熱量や感動がフィッシュマンズと変わらなかったからだと思います」 
 
 今後はもっと自由に音楽を奏でたいという。 
 
「年月を重ねると色んな方程式を作ってしまう。『あの曲が面白くなったプロセスってこういうアレンジしてた』みたいな。でも守りに入って考えを固定してしまうとアート的に終わる気がしていて……。なので“方程式”が完成すると壊す作業に挑戦してきました。とにかく楽曲の最新の姿をライブで魅せる。それがミュージシャンとして今を生きているってことだと思います」  

(取材・文=白井杏奈/日刊ゲンダイ)

▽もてぎ・きんいち ドラマー。1967年、東京生まれ。明治学院大学卒業。87年、バンド「フィッシュマンズ」を結成。91年、メジャーデビュー。2001年、「東京スカパラダイスオーケストラ」に加入し、ドラム担当として活動中。08年、スリーピーズバンド「So many tears」を結成。

「映画:フィッシュマンズ」 
7月9日(金)より、新宿バルト9、渋谷シネクイントほかにて順次公開 

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