「ふなずし」「箱寿司」発酵ブームで再注目…郷土すしの起源は? ラオスでも食べられている"なれずし"って何?
ここ数年続く発酵ブームは、「腸活」⇒「クラフト発酵」⇒「ローカル発酵」と広がっている。ローカル発酵とは、乳酸発酵や甘酒系、魚醬系の発酵で、奈良漬けや滋賀県のふなずしなどがある。こうした地域の発酵食は現在、作り手の高齢化や市場の縮小などで”絶滅危惧食”になりつつあるという。今年3月には龍谷大学の研究者らが「江戸時代のフナズシに挑戦する」といった研究報告会も開催し、文化を残す取り組みもなされている。そこで、”絶滅”の危機に瀕している「郷土すし」について専門家に聞いた。
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そもそも、寿司の起源は日本ではないという。さらに寿司研究は意外と新しく、約60年前に出版された篠田統氏の著書『鮓の本』が転機だったそうだ。郷土すし研究者の日々野光敏氏が言う。
「東南アジアという説が一般的です。南方から伝わったという文献は多いですが、日本で最も古い寿司の記録は、縄文時代に触れるほど古く、明確な記述が残っていない。日本にお金(貨幣)文化が入ってきたのが今から2000年ほど前。その頃には発酵と魚の加工技術が伝わっていたと考えられています。仮に起源を紀元300年頃とする説もありますが、正確には分かっていません。日本では、篠田さんの著書によって初めて『鮓とは何か』という定義が議論されるようになったのです。ただ、篠田さんの時代には寿司=酸っぱいご飯の料理と定義されていましたが、現実には酸っぱくない寿司もありますし、ご飯を使わない“おから寿司”のような例も存在します」
その後、民俗学の石毛直道氏らが研究を発展させた。石毛氏は東南アジア山間部起源という篠田説に対し、「稲作民の暮らす平野部で生まれた可能性が高い」と結論づけており、これが現在の主流説となっている。
「私自身も石毛さんに学び、漠然と『東南アジア起源』だと思っていましたが、最近は中国南部(長江流域)起源説にも注目しています。お米文化が強く、魚も豊富で、発酵技術も古くから発達している地域ですから。日本へは福建省あたりを経由して伝わった可能性が高いと考えています。そのため、寿司文化はまず西日本に根づいたとみられます。本来、酸味は生理的に好まれない味なはずなのですが……魚と米の発酵が生み出す旨味と酸味のバランスが、日本人の味覚には深く響くのと、なれずしが徳川家に献上されるなど、歴史の中で“特別な食”として扱われてきた背景も、日本人の寿司好きに影響しているのだと考えています」(日々野光敏氏)
ちなみに、最も”原型”に近い寿司が今も残っているのは島根県雲南市だという。


















