三枝成彰
著者のコラム一覧
三枝成彰作曲家

1942年、兵庫県生まれ。東京芸大大学院修了。代表作にオペラ「忠臣蔵」「狂おしき真夏の一日」、NHK大河ドラマ「太平記」「花の乱」、映画「機動戦士ガンダム逆襲のシャア」「優駿ORACIÓN」など。2020年、文化功労者顕彰を受ける。

河瀬直美さんの在野精神はどこへ…アーティストは未来の評価を気にかけるべきだ

公開日: 更新日:

 河瀬直美さんが総監督を務めた東京五輪の記録映画撮影に密着したNHKの番組が波風を起こしている。

 番組では開催反対のデモに参加したとされる男性の映像に「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕が付けられていたが、その後NHKは事実が不確かなまま放送したと謝罪した。

 確かにそれは問題だが、もうひとつ、強く感じたことがある。「アーティストは未来の評価を気にかけるべきだ」ということだ。河瀬さんは才能があり、インディペンデントな立場で映画を撮り続けている人だと思っていたが、番組での発言を見ると“在野の精神”から離れてしまった気がした。

 彼女は「国際社会からオリンピックを7年前に招致したのは私たちです」とし、「そしてそれを喜んだし、ここ数年の状況をみんなは喜んだはず」だと言った。もちろんその意見は尊重されるべきだが、五輪招致を誰もが「喜んだはず」とするのは、大ざっぱすぎるだろう。

 今回の話で思い出すのは、1936年のベルリン五輪だ。世界各国がナチスのユダヤ人迫害を知りながら参加したことへの疑問や悔恨の念はいまだにある。世界中がナチスにNOを突きつけボイコットしていたら、ホロコーストも違った結果になったのではないか、と。このとき記録映画「オリンピア」(「民族の祭典」「美の祭典」)を撮ったのは女性の映画監督レニ・リーフェンシュタールだが、戦後は米仏両軍からナチスへの協力のかどで逮捕された。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    今オフ勃発「FA捕手大シャッフル」…侍Jの巨人・大城、SB甲斐を筆頭に中日、阪神も参戦か

    今オフ勃発「FA捕手大シャッフル」…侍Jの巨人・大城、SB甲斐を筆頭に中日、阪神も参戦か

  2. 2
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 3
    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  4. 4
    3Aでもボロボロ…藤浪晋太郎の活路を開くのは阪神復帰か? 日本ハム、オリックス移籍か

    3Aでもボロボロ…藤浪晋太郎の活路を開くのは阪神復帰か? 日本ハム、オリックス移籍か

  5. 5
    3人兄妹の末っ子だから年上と遊ぶ機会が多く、彼らと遊ぶだけの体力もあった

    3人兄妹の末っ子だから年上と遊ぶ機会が多く、彼らと遊ぶだけの体力もあった

  1. 6
    “辞めジャニ”野村義男は59歳で現役バリバリ!引く手あまたの秘訣は「第三の道」を歩んだこと

    “辞めジャニ”野村義男は59歳で現役バリバリ!引く手あまたの秘訣は「第三の道」を歩んだこと

  2. 7
    巨人・秋広が今季初昇格も阿部監督「全く期待していない」…のんきな性格がアダで早くも背水の陣

    巨人・秋広が今季初昇格も阿部監督「全く期待していない」…のんきな性格がアダで早くも背水の陣

  3. 8
    阪神・岡田監督が密かに温めていた「藤浪獲得プラン」が消滅していた…

    阪神・岡田監督が密かに温めていた「藤浪獲得プラン」が消滅していた…

  4. 9
    当時日本ハムGMだった山田正雄氏が「この性格はプロでやる上でプラスになる」と確信した決定的瞬間

    当時日本ハムGMだった山田正雄氏が「この性格はプロでやる上でプラスになる」と確信した決定的瞬間

  5. 10
    人間性やスタンスが如実に表れたMLB挑戦時の「西海岸かつ小規模都市」へのこだわり

    人間性やスタンスが如実に表れたMLB挑戦時の「西海岸かつ小規模都市」へのこだわり