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松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

「ほどよい不完全さ」をあえて残しておくのが作詞のむずかしさでもあり、おもしろみでもある

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■詩はpoem、詞はlyrics

 それなのに、この賞の正式表記は「日本作詩大賞」、主催団体は1965年の設立以来「日本作詩家協会」とくるから話はややこしい。さらに言えば、公式ホームページには「作詞家への道」というコーナーもあり、協会も二通りの表記を容認していることがわかる。

 ぼくの考えは英語を使うとわかりやすく説明できる。詩はpoem、詞はlyrics。ほら、別物でしょう。詩を小説にたとえるなら、詞は戯曲。劇作家が役者の演技の余地を残しながら戯曲を書くように、現代の作詞家は歌声とバックトラック(伴奏)のためのスペースをあらかじめ確保して詞を作る。豊かな情報量の声をもつ歌手にとって、完全な言葉の束は完璧を意味しないどころか、時として情報過多のお粗末な詞となる。つまり「ほどよい不完全さ」をあえて残しておくのが作詞のむずかしさであり、おもしろみでもある。ぼくは体験的にそう感じている。

 巡りあわせというべきか、今週は詩と歌の関係についてたいへん自覚的な詩人の吉増剛造さんと公開対談する予定だ。これは1939年生まれの吉増さんが、実験映画の世界的巨匠にして盟友の故ジョナス・メカスの足跡をたどる新作ドキュメンタリー『眩暈VERTIGO』の上映記念イベント。同作を撮った井上春生監督の『音符と昆布』(2008年)の音楽プロデュースを手がけた縁で、ぼくは今回パンフレットに寄稿したのだが、それに何かを感じたらしい吉増さんから対談相手に指名されたのである(写真は12月14日)。

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