著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

川口春奈「9(ナイン)ボーダー」は悩めるボーダーたちへのの柔らかな応援歌だ

公開日: 更新日:

 うまいタイトルをつけたものだ。川口春奈主演「9(ナイン)ボーダー」(TBS系)である。ここでは20代や30代といった各年代の最終年やその状態を指している。

 孔子は「三十にして立つ。四十にして惑わず。五十にして天命を知る」などと、節目の年齢における理想像を「論語」で示した。だが、実際に29歳や39歳というボーダーに立った時、何となく焦りを感じたり、どこか落ち着かない気分になる人は少なくないはずだ。

 銭湯を営む大庭家の長女・六月(木南晴夏)は39歳。会計事務所を経営しているが、別居中だった夫と離婚した。次女で29歳の七苗(川口)は勤めていた会社を勢いで辞めてしまった。そして、やや引っ込み思案の三女・八海(畑芽育)は19歳の浪人生だ。

 3人は、「私、これからどうしたいんだ?」という迷いの中にいることで共通している。しかし、彼女たちは基本的に元気だ。七苗が付き合い始めた記憶喪失の青年・コウタロウ(松下洸平)や、六月を慕う部下の松嶋(井之脇海)ら、心優しき男たちが近くにいる。何より3姉妹が互いに支え合う姿がほほ笑ましい。

 脚本は「恋はつづくよどこまでも」(TBS系)などで知られる金子ありさだ。やりたいことや夢には時間制限がないこと。年齢で線引きして諦めないこと。このドラマは、悩めるボーダーたちへの柔らかな応援歌だ。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 2

    マエケンは「田中将大を反面教師に」…巨人とヤクルトを蹴って楽天入りの深層

  3. 3

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 4

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  5. 5

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  1. 6

    陰謀論もここまで? 美智子上皇后様をめぐりXで怪しい主張相次ぐ

  2. 7

    白木彩奈は“あの頃のガッキー”にも通じる輝きを放つ

  3. 8

    渋野日向子の今季米ツアー獲得賞金「約6933万円」の衝撃…23試合でトップ10入りたった1回

  4. 9

    12.2保険証全面切り替えで「いったん10割負担」が激増! 血税溶かすマイナトラブル“無間地獄”の愚

  5. 10

    日本相撲協会・八角理事長に聞く 貴景勝はなぜ横綱になれない? 貴乃花の元弟子だから?