「ラ・コシーナ/厨房」は大型レストランを舞台にした米国分断の縮図だ

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 レストランを描いた映画に共通するのはその密閉性だ。潜水艦のような逃れようのない密室で人々がせめぎ合う。「ディナー・ラッシュ」(2000年)、「ボイリング・ポイント/沸騰」(2021年)など厨房を舞台にした作品を見るたびに、筆者は息苦しさを覚えてしまう。本作もしかり。社会的立場が弱く貧しい人々の失望と不安、怒りを詰め込んで、酸欠状態の筆者に「どうだ」と突きつけてくる。

 オーナーのラシッドは従業員たちを利益を生み出す道具としか見ていない。「十分な給料を与える」と言うが、その言葉はロバの人参だ。彼は従業員と連帯するのではなく、一方的に支配しようとしている。そのためラストに近づくにつれてラシッドの顔がギャングに見え、ラストシーンではトランプ大統領に変じた。オデッド・フェールの名演技を賞賛したい。

 本作はトランプによる米国世論の分断がもたらした問題作。見終わって「自由の女神とは何なのか」としばし考えてしまった。(配給:SUNDAE)

(文=森田健司)

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