「入国審査」移住希望の若いカップルを襲った“合法の拷問劇”

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観客は見ているうちに「自問」してしまう

 米国の地を踏んだとたん、ディエゴとエレナはジワジワと言葉で責めさいなまれる。最初は女性審査官だ。この女が2人と同様にスペイン語を話せる人物で、とにかく顔が怖い。鬼の表情で睨みつけ、「すべては私の裁量で決まる」と傲然と威圧してくる。

 エレナは喉が渇いている。しかも糖尿病だ。水を飲みたいと訴えるが、それすら許されない。取調室という密閉空間の中で、2人は精神的、肉体的に支配されている。入国審査官は血も涙もないのか。いや、ここには人権も存在しないのか。こう思ったとき、敵は新たに男性審査官を投入。2対2、さらに2対1の攻防戦が始まる。「偽装カップルではないか」と疑う審査官は目の前の若者に「本当に愛し合っているのか?」「セックスの頻度は?」と露骨な質問をぶつけくる。

 おまけに建物は工事中で騒音が響き、蛍光灯が消えて暗がりになる。観客は登場人物とともに絶叫したくなるほどの不快感に侵食される。

 劇中に怒鳴り声や泣き声が響くわけではない。ただただ静かな言葉のやりとりを見るだけ。だが見ているうちに「俺だったらどこまで我慢できるだろうか?」と自問してしまう。気の弱い筆者は「勘弁してくださいよ~!」と涙で懇願するかもしれない。とにかく恐怖ともいえる極度の緊迫感が押し寄せてくるのだ。

 この映画でわれわれが目にするのは単なる入国審査ではない。悪意に満ちた執拗な嫌がらせだ。いや言葉を駆使した拷問と表現してもいい。空港内で行われる“合法の拷問劇”によって、若いカップルの愛情に亀裂が生じる。その果てに待っているものは何か。劇場で確かめていただきたい。(配給:松竹)

(文=森田健司)

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