「731」「雪風 YUKIKAZE」…戦後80周年を映画と共に考える
駆逐艦・雪風の役割を描いた邦画「雪風 YUKIKAZE」
15日から公開されている「雪風 YUKIKAZE」は、「ゴジラ-1.0」(2023年)にも登場した、戦時中の激戦を生き抜いて必ず帰還した駆逐艦〈雪風〉を描いたもの。しかし描写のメインは戦闘シーンではなく、その機動性の高さを生かして仲間の人命救助のために活動した“雪風自体の役割”。一人でも多く生きて帰るために尽力する艦長を、竹野内豊が演じている。
日本の戦争映画は「陸軍残虐物語」(1963年)に代表される軍隊内部の理不尽さを描いたものや、日本軍が敗戦へと転じるプロセスを大きな戦闘の流れによって見つめた「ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐」(60年)、結婚と出産という家族にとって忘れられない日を迎えた長崎の一家が、翌日の原爆投下によってすべてを奪われてしまうまでを描く「TOMORROW 明日」(88年)、戦後に発症した原爆症によって引き裂かれる若いカップルを吉永小百合と渡哲也が演じた「愛と死の記録」(66年)など、軍隊や庶民の立場からさまざまな視点で描いてきた。
現在では作り手の高齢化が進み、戦地へ行った当事者がいなくなったこともあり、組織としての軍隊を描く作品は減って、もっと大きく戦争自体を、個人の立場から検証・否定する映画が目立ってきた。戦争は弱き者の命を容赦なく奪う。多くの人を巻き込む戦争は、理屈抜きの悪行だ。節目の終戦記念日は映画と共に、戦争とは何かを見つめなおすいい機会になるだろう。
(映画ライター・金澤誠)