「戦下の歌舞伎巡業記」岡﨑成美著

公開日: 更新日:

「戦下の歌舞伎巡業記」岡﨑成美著

 2018年の夏、著者は本棚で「おじいさんの大事なもの」と上書きされた古い封筒を見つけた。「旅行日誌」と書かれた小冊子が入っていて、1ページ目の昭和7年10月の項に「九州巡業ノ途ニ就く」とある。歌舞伎狂言作者だった祖父の地方巡業の備忘録では?

 数えてみたら二百五十余の巡業地が記録されていた。太平洋戦争開戦の昭和16年をみると、ほかの年に比べて地方で切符が売り切れた劇場が多い。この年の売り切れ率は54.5%にも上る。12月8日にはアメリカとの戦争が始まるのに、歌舞伎のような娯楽に熱中することが許されたのか。

 大歌舞伎一座の巡業記録が伝える戦時下の意外な演劇界の状況。

(河出書房新社 3520円)

【連載】今日の新刊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ソフトバンクに激震!メジャー再挑戦狙うFA有原航平を「巨人が獲得に乗り出す」の怪情報

  2. 2

    山崎まさよし、新しい学校のリーダーズ…“公演ドタキャン”が続く背景に「世間の目」の変化

  3. 3

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  4. 4

    草間リチャード敬太“全裸騒動”にくすぶる「ハメられた」説…「狙った位置から撮影」「通報が早い」と疑問視する意見広がる

  5. 5

    維新の「議員定数1割削減」に潜む欺瞞…連立入りの絶対条件は“焼け太り”狙った露骨な党利党略

  1. 6

    山崎まさよし公演ドタキャンで猛批判 それでもまだ“沢田研二の域”には達していない

  2. 7

    ドジャース大谷翔平が直面する米国人の「差別的敵愾心」…米野球専門誌はMVPに選ばず

  3. 8

    「これが寝るってことだ」と感激…女優の岡崎友紀さん変形性股関節症との苦闘

  4. 9

    クマが各地で大暴れ、旅ロケ番組がてんてこ舞い…「ポツンと一軒家」も現場はピリピリ

  5. 10

    公然わいせつ容疑で逮捕→釈放も“連帯責任”…Aぇ! group草間リチャード敬太の芸能界復帰はイバラの道