「マジカル博物館ツアー」パトリック・ボー著 藤村奈緒美、神奈川夏子訳
「マジカル博物館ツアー」パトリック・ボー著 藤村奈緒美、神奈川夏子訳
「元パートナーが置いていった家具を壊すために使われた斧」「離婚が成立した日に元夫の車のフロントガラスに投げつけた小人の置物」「ピンクの毛皮でできた手錠」--クロアチアのザグレブには、こうした品々を展示する博物館があるそうだが、どんな博物館かお分かりだろうか。
別れた恋人(夫婦)から寄付された「恋愛の形見」を展示する、その名も「失恋博物館」だそうだ。各展示物にはその由来を語る説明文が添えられ、見学者はつい自身の恋愛体験を重ね合わせて見入ってしまうという。
本書は、旅のガイドブックには載っていなさそうな、ちょっと変わった博物館・美術館を紹介するビジュアルガイド。
トルコのアバノスという町にある「ガリップ髪の毛博物館」は、陶磁器の店の地下室にあり、その壁や天井は女性たちの髪で覆われ、「髪の毛の神殿」と化している。
40年ほど前、陶磁器商のガリップの恋人だった女性が町を去る際に思い出の品としてひと房の髪の毛を残していった。話を聞いたほかの女性たちも自分の髪の毛ひと房を、住所を記したメモをつけて彼に贈るようになり、今では1万6000人以上の女性の髪が「展示」されているそうだ。
ほかにも、巨人の体内を探検しながら、生殖器では卵子が精子によって受精するところに立ち会ったり、腸ではサンドイッチが消化される過程をたどるなど、人体の驚異について学べるオランダ・ライデンの「コルプス」や、ロンドンの聖トーマス教会の屋根裏部屋にかつてあったヨーロッパ最古の手術室を今に伝える「旧手術室博物館」など個性派ミュージアム100館を網羅。
日本からも4館が取り上げられている。気になる方はぜひ、本書で。
(日経ナショナル ジオグラフィック 3630円)