「時代に挑んだ男」加納典明(51)拘留10日間、「同房の殺人犯らが『ファンです。肩を揉みます』って(笑)」
作家・増田俊也氏による新連載スタート。各界レジェンドの生涯を聞きながら一代記を紡ぐ口述クロニクル。第1弾は写真家の加納典明氏です。
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増田「(1995年の)猥褻写真での逮捕で誰が守ってくれたか誰が裏切ったか、具体的な名前は挙げられないでしょうが、いったいどんなことが起こっていたんですか」
加納「俺のまわりにいた文化人・知人・友人たちも声を上げてくれて『最高裁までやるぞ! サポートするぞ!』と言ってくれて、記者会見まで開いたんだ。だけど『逮捕』という空気が濃く漂い出した途端、ディレクターも出版社の社長も、『堪忍してくれ』だの『社員や家族がいる』だのと泣きついてきた」
増田「醜いですね」
加納「そのディレクターは仕事以外でも長年関わってきた友人だったから、ガッカリしたよ」
増田「それはそうでしょう」
加納「その後、彼らとは疎遠になった。ディレクターはもしかしたらずっと後悔していたのかもしれないけど、亡くなる直前まで関係は戻らなかった。最後に病床で会って話をして、そういう彼の後悔を感じたんだ。その時、もう許そうと思った。笑顔で握手して一緒に写真を撮った。それが奴との最後になったな」
増田「それはよかったですね」
加納「そこから学んだ、というのは大げさだけど、戦うときは独りで。まわりを気にしてたら出来ないということだね」
増田「あの逮捕で、ご自身の撮る写真が変わったとか、そういうことはありましたか?」
加納「ないですね。全くないです」
増田「むしろ、より戦ってやろうという気持ちになったとか?」
加納「そうですね。むしろそっちです」
増田「より挑戦的になった?」
加納「そうですね。だから、付き合える出版社があれば、もっとやったと思いますよ」
増田「仮にいまそういう依頼があったとしたら、やっぱり挑戦したいですか」
加納「やりたいですね。絶対」
増田「年齢関係なく?」